喫煙習慣で血中濃度が上がる老化関連分子「αクロトー」
大阪大学は7月24日、ストレスや睡眠の質が老化関連分子として知られているαクロトーの血中濃度を変化させることを発見したと発表した。この研究は、同大キャンパスライフ健康支援センターの中西香織助教、瀧原圭子教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Investigative Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
慢性的なストレスはメンタルの不調だけでなく、心血管疾患、消化器疾患、メタボリックシンドロームなど、さまざまな疾患や健康障害を増悪させるリスク因子であることは広く知られている。しかし、ストレス状態を示す客観的な指標となるバイオマーカーについて現在確立されているものはない。研究グループはこれまでに慢性的ストレスの一つである喫煙習慣が老化関連分子αクロトーの血中濃度を上昇させることを報告している。そこで、今回の研究ではストレス・生活習慣とαクロトーとの関係性に着目し、ストレスや生活習慣がαクロトーにどのような影響を及ぼすか検討を行った。
ストレス状態を示す新しいバイオマーカー候補に
研究では、基礎疾患のない非喫煙者を対象とし、身体計測、血液検査、問診による生活習慣調査、心理的ストレスの程度を表わす指標として利用されているK6質問票を用いて、血清αクロトー値との関連について解析を行った。「ストレスへの対応ができていない」「睡眠で十分な休養がとれていない」と回答した群で血清αクロトー値が有意に上昇していたことから、精神的ストレスや睡眠状態が血清αクロトー値に影響を及ぼしている可能性が考えられた。さらに血清αクロトー値は、精神的ストレスや睡眠状態との関係性についてK6スコアと同様の傾向を示していた。これらの結果から、血清αクロトー値の上昇はストレス状態を予見している可能性があることが示唆された。
ストレスを感じている現代人は近年、非常に多くなっているにも関わらず、ストレスの程度を測定する方法は質問票など主観的なものが主流となっている。今回の研究成果は、ストレスや睡眠の質が血中の老化関連分子クロトーに影響を与えることを発見したものであり、「ストレス状態を示す新しいバイオマーカーとして、血清αクロトーが今後利用できる可能性があると考えられる」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 リソウ