つらい姿勢、助手が視野を共有できないなどの問題点解消を目指し共同開発
日本医療研究開発機構(AMED)は7月22日、「手術用の高精細(4K)3Dビデオ蛍光顕微鏡」を開発したと発表した。この研究は、京都大学大学院医学研究科の八木真太郎講師、上本伸二教授、慶応義塾大学の小林英司教授らが、三鷹光器株式会社、パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社との共同で行ったものである。
画像はリリースより
脳神経外科、形成外科、耳鼻科、眼科、移植外科などでは細かい血管や臓器や組織に対する手術のために手術用顕微鏡を用いているが、手術を行う術者はレンズを長時間にわたって覗く姿勢を強いられるため、これが首や腕のしびれの原因となって手術の質を低下させている場合がある。また、顕微鏡手術では術者が見ているものと全く同じ視野を助手や見学者が共有することができず、技術伝承の妨げにもなっている。
そこで、外科医にも患者にも優しく安全な手術用顕微鏡の開発を目指し、AMEDの医工連携事業化推進事業の支援を受け、京大、慶大、三鷹光器、コネクティッドソリューションズ社は、「手術用の高精細(4K)3Dビデオ蛍光顕微鏡」の開発を企図した。
高倍率で双眼による3Dの4K画像をモニター投影、今後は米中での上市も予定
今回開発した装置は、高性能レンズを搭載し、手術部位を遠方からのズームにより双眼3Dの4Kモニター上に映し出す仕様。従来の顕微鏡では、高倍率時の焦点深度が浅くなりピントが合いにくいという問題があったが、同装置はこの問題点が解消され、優れた深視力をもつ。また、術者と助手が同一モニターを見ながら楽な姿勢で手術ができ、倍率を速やかに調整できるため、さまざまな領域の手術に対応可能なだけでなく、教育にも有用だ。さらに、血液の流れや腫瘍(がん)を蛍光画像とし、リアルタイムにモニターに重ねて表示することも可能なため、腫瘍の位置や手術の出来具合を確認しながら、より安全に手術を行うことができるという。
今後は、2019年に医療機器として届出・上市した製品の量産化を準備し、2020年以降に国内での販売を強化していく予定。海外においては、2021年に米国市場で、2022年には中国市場での上市を予定しており、この新型顕微鏡を用いた新しい手術法の、世界への普及を目指す予定だとしている。
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・日本医療研究開発機構(AMED) プレスリリース