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ヒトが「しっとり感」を感じる力学的メカニズムを解明-山形大ら

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2019年07月12日 PM12:15

濡れていない物質に対してもなぜ「」を感じるのか

山形大学は7月10日、「しっとり」という言葉の音韻学的解析と化粧用粉体、人工皮革など12 の物質の手触りについて官能評価を行うとともに、最新鋭の摩擦評価装置を駆使して皮膚に加わる力学的刺激との関係を解析し、滑り出しでぐっと摩擦力が高まりながらも、その後一気に摩擦力が下がる特徴的な力学刺激が「」「」を引き起こし、しっとり感として感じられることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学の野々村美宗教授、電気通信大学の坂本真樹教授、大東化成工業株式会社らによる共同研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Royal Society Open Science」に同日付でオンライン掲載された。


画像はリリースより

ヒトはモノに触れた時、「さらさら」「べたべた」「しっとり」など、さまざまな触感を感じる。しかし、なぜ多彩で繊細な質感を感じ分けることができるのか、そのメカニズムはわかっていない。その理由として、ヒトの感じる感覚はあやふやで個人差があり、定量的に解析することが難しいこと、モノに触れた時に皮膚に加わる力学的な刺激を直接測定することは難しく、物理的な観点からメカニズムを解析することが難しいことなどが挙げられる。

そこで、今回研究グループは、モノに触れた時に喚起されるさまざまな質感のうち、粉体や布のような水分を含まない物質での「しっとり感」に着目。化粧用粉体・人工皮革・繊維・樹脂・金属などさまざまな物質に触れた時に感じる触感を評価する官能評価を行うとともに、「しっとり」ということばの音韻学的な特徴を解析し、この触覚がどのような因子から成り立っているか、明らかにした。また、ヒトの指の構造・硬さ・表面物性やヒトがモノに触れた時の動きを模倣したオリジナルの摩擦評価装置「バイオミメティック触感センシングシステム」を使って皮膚に加わる力学的刺激をモデリングし、「しっとり感」という心理現象が喚起される物理的なメカニズムを明らかにした。

摩擦抵抗の変化が「しっとり感」を生み出すと判明

具体的には、20人の被験者を対象に行った官能評価試験により、「しっとり感」が最も高いのは、ファンデーションの原料として用いられる化粧用粉末で、「湿り感」と「なめらか感」が組み合わさると「しっとり感」として認知されることが判明。音韻学的解析からも「湿り感」と「なめらか感」がしっとり感と関係の深い因子であることが確認された。

さらに、この「湿り感」と「なめらか感」を喚起する物理的刺激を、バイオミメティック触感センシングシステムにより解析。ヒトの指の構造・硬さ・表面物性を模倣した「指モデル接触子」を用いて今回官能評価の対象とした12の物質の摩擦特性を評価したところ、接触子が滑り出すときの摩擦抵抗の大きさを示す静摩擦力が小さいほどなめらか感が高くなることが明らかとなった。これらの結果は、モノに触れた瞬間に大きな静摩擦力が発生し、抵抗感が認知されると「湿り感」が、その後摩擦抵抗が一気に低下して抵抗感が小さくなると「なめらか感」が喚起されること、これら2つの因子が成立したときにはじめて「しっとり感」が感じられることを示す。

今回の研究で、「しっとり感」を構成する因子とその物理的な発現メカニズムを解明した研究グループは、今後「さらさら感」「ぬくもり感」などほかの質感についても検討をおこない、多様な触感が発現する物理的メカニズムを解明していく予定としている。また、研究グループは、「触感が喚起されるメカニズムが明らかとなり、それがコントロール可能となれば、しっとり感が高く高級感にあふれる化粧品や衣服、手術ロボット用バーチャルリアリティシステム、触感を感じるヒューマノイド型ロボット開発など、多彩な分野への応⽤が期待される」と、述べている。

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