複雑な構造を持つ汗腺の動きを解明
大阪大学は6月18日、ヒト汗腺の3次元構造の発汗収縮における時間的な変化を三次元ライブイメージング法により明らかにし、新しい制汗剤コンセプトの提案をしたと発表した。この研究は、同大学院薬学研究科先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座の岡田文裕招へい教授、中島輝恵特任研究員(常勤)らの共同研究グループによるもの。そのコンセプトが評価され、化粧品産業において世界最大のクラスターであるCosmetic Valley(仏)が主催するコンテストCosmetic Victories2019において最優秀賞を受賞した。
画像はリリースより
温暖化や超高齢社会を背景に、多汗症や熱中症の患者の増加が社会的問題となっている。障害を起こした発汗機能を改善するためには、発汗時に収縮を起こす汗腺の構造を理解する必要がある。汗腺は分泌部と導管部で構成された1本の管状の外分泌腺で、分泌部で放出された汗が導管部を通って皮膚表面に排出される。汗腺の末端の分泌部と一部の導管部は、糸くずが絡まるようにコイル状に複雑に折りたたまれ、このコイル領域に存在する汗腺分泌部の一番外側の層を筋上皮細胞が取り囲み、発汗時に収縮するとされているが、汗腺は複雑な構造を持つため、従来の解析では汗腺の動きを解明できていなかった。
汗腺の出口にフタをせず、眠らせることで発汗を抑制
これまで研究グループは、ヒトの汗腺幹細胞を発見し、生体外での汗腺様構造体の再生、汗腺の3次元構造の可視化を成功させてきた。今回、同研究グループは、ヒト汗腺の3次元構造の発汗収縮における時間的な変化を、三次元ライブイメージング法により明らかにした。さらに、中島輝恵特任研究員は、この観察技術の応用として、従来の「汗腺の出口にフタをする制汗剤」ではなく、「汗腺を眠らせる」ことで発汗を抑える新しい制汗剤コンセプトの提案を行った。
今回受賞した新規コンセプトにより、発汗時の汗腺の収縮を抑えられる次世代制汗剤が開発されれば、従来の制汗剤の問題点解決と、多汗や汗臭の改善に大いに役立つことが期待される。株式会社マンダムではこの評価法を用いて、発汗制御につながる次世代制汗剤の製品化に取り組んでいくとしている。
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