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空気中の異物を体内に取り込む細胞発見、花粉症・アレルギーの発症機序解明へ-慶大ら

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2019年06月17日 PM01:00

抗原の取り込み機構について研究

慶應義塾大学は6月13日、呼吸によって吸い込んだ異物の取り込みに働く特殊な細胞を発見したと発表した。この研究は、同大薬学部の木村俊介准教授、長谷耕二教授、同大医学部の石井誠専任講師、北海道大学大学院歯学研究院の武藤麻未医員、久本芽璃学術研究員を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」電子版に公開されている。


画像はリリースより

呼吸器粘膜は空気中の花粉、埃、微生物に常にさらされている。ヒトの体はこれらの微細な粒子を認識し、免疫システムを働かせることで体を守るが、ときに過剰に反応し、アレルギーを引き起こす。

アレルギーは抗体の産生によって引き起こされることから、体内の免疫システムは、抗体が標的とする抗原(アレルゲン)を受け取っていると考えられている。そのため、空気中の抗原が上皮を越える機構が存在すると予想されているが、機構についての解析は進んでいない。

M細胞からの抗原取り込み制御で新たな予防・治療法開発へ

研究グループは今回、腸管の抗原取り込み機構に着目して研究を進めた。腸管ではM細胞と呼ばれる上皮細胞が存在し、異物に対する高い取り込み能力を持っている。しかし、呼吸器に同様なM細胞が存在しているかは不明だった。そこで、腸管M細胞に対する特異的分子マーカーであるGP2とTnfaip2を用いて、マウスの気管・気管支の免疫染色を行い 、GP2 Tnfaip2陽性細胞の探索を行った。その結果、少数の陽性細胞が気管・気管支上皮に存在していることがわかった。

続いて、M細胞の分化を促進するサイトカイン「」をマウスへ投与したところ、気管・気管支に非常に多くのGP2 Tnfaip2陽性細胞が出現した。この細胞は、空気中の異物に見立てたナノ粒子を効率よく取り込む能力を持っていた。同細胞の微細構造を観察したところ、線毛を持たない上皮細胞であることが判明。これらの特徴は、腸管M細胞とよく似ていることから、GP2 Tnfaip2陽性細胞は、呼吸器M細胞であると結論づけた。さらに、呼吸器M細胞と呼吸器疾患の関係を検証するため、疾患モデル動物を用いて呼吸器M細胞の存在を検証。その結果、シェーグレン症候群の病態モデルとなるNon obese diabetes (NOD)マウス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルとしてエラスターゼ投与マウス、タバコ煙吸入マウスの気管・気管支にリンパ球浸潤が認められ、その近傍の上皮にM細胞が存在していることが明らかになった。

呼吸器M細胞を試験管内で作製することができれば、動物実験では難しい呼吸器感染症などの研究や、同細胞がどのように形成されるかの解析にとって、非常に有用となる。そこで、マウスの気道から上皮細胞を分離し、M細胞を作製できるかを検証。マウス気管から上皮細胞を分離し、上段と下段に別れた特殊な培養容器を用いて、下段にRANKLを添加した培養液、上段を空気相として、気相液相界面による培養を10日間継続した。その結果、ナノ粒子をよく取り込む性質を持ち、M細胞マーカーを持つ細胞を得ることに成功した。

今回の研究は、呼吸器におけるアレルギー、感染において抗原や微生物が生体に侵入する経路を明らかにしたものであり、呼吸器疾患の発症や悪化のメカニズムの解明につながると考えられる。研究グループは、「今後は呼吸器M細胞からの抗原取り込みを制御することで、新たな予防・治療法開発等の臨床応用への発展が期待される」と、述べている。

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