培養可能な形で血液細胞試料を保有する国内最大級のバイオバンク
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は4月11日、2016年に開始した共同研究において、2018年10月にTMM計画のコホート調査に参加した地域住民のうち、6人分の血液細胞からiPS細胞を樹立することに成功したと発表した。
画像はリリースより
TMM計画では、2013年からToMMoと岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が協力して宮城県・岩手県の住民を対象としたコホート調査に取り組み、15万人以上の参加者から提供された生体試料や、健康に関わる種々の情報を保管するバイオバンクを構築してきた。TMMのバイオバンクは、血清、血漿、血液由来のDNA、尿とともに、血液細胞(単核球)も保管しており、培養可能な形で血液細胞試料を保有する国内最大級のバイオバンクとなっている。また、TMMでは、15万人のコホート調査参加者から提供された生体試料を使って参加者全員のゲノム解析を計画しており、すでに約5,000人分の全ゲノム解析と約10万人分のDNAマイクロアレイ解析を完了している。
一方、CiRAはこれまで、さまざまな健康状態の人から細胞を提供してもらい、疾患特異的iPS細胞や、その対照として重要な健常人由来iPS細胞の樹立に取り組んできた。iPS細胞から特定の臓器や組織の細胞を作製することにより、細胞提供者の臓器や組織の特徴をよく再現できることが知られている。
解析した全ての細胞株が、外胚葉・中胚葉・内胚葉に分化する能力を保持
今回、TMMのバイオバンクに保管されている血液細胞(末梢血単核球)の中から、すでに全ゲノム解析が行われている6人分について、それぞれ6株ずつ計36株のiPS細胞を樹立。樹立された36株のiPS細胞株が、今後の研究に用いるために十分な性質を備えていることを確認するために、コロニー形態や未分化マーカー遺伝子の発現、樹立に用いたプラスミドベクターの残存等の解析を行った。その結果、これまでにCiRAで樹立され、さまざまな研究に用いられているiPS細胞株と同様の性状を示すことが確認された。また、今回樹立されたiPS細胞が各種細胞に分化する能力を備えているか確認するため、樹立されたiPS細胞株の一部(12株)を用いた三胚葉分化能解析を実施。その結果、解析を行った全ての細胞株は、外胚葉・中胚葉・内胚葉の3つの細胞系譜に分化する能力を保持していることが確認された。
今回の成果により、TMMのバイオバンクから遺伝情報等をもとに細胞を選択してiPS細胞を樹立し、それらを分化させ、細胞や組織の機能に対する遺伝子型の影響をさまざまな解析研究に用いることが可能となり、個別化医療の進展に貢献することが期待される。
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