iPS細胞からCAR発現NK細胞を製造
京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)は4月3日、CiRAが作製した再生医療用iPS細胞ストックからCAR(キメラ抗原受容体)発現自然キラーリンパ球(NK細胞)への製造開発に関する共同研究をキリンホールディングス株式会社と共に開始したと発表した。
iPS細胞技術を患者に届けるためには、品質の保証されたiPS細胞を安定的に提供できる体制が不可欠。そこでCiRAでは、CiRA附属の臨床用細胞調製施設であるFiT(Facility for iPS Cell Therapy)において、2013年度から再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを推進し、原料の細胞となるiPS細胞ストックを提供してきた。
低コストで安定に供給する体制構築を目指す
今回のプロジェクトは、CiRAのiPS細胞ストックから、がんの細胞治療に用いる臨床試験用の免疫細胞を製造することが目的。まずはCiRAの金子新准教授のグループによる研究成果をもとに、iPS細胞ストックにがんを認識するCAR遺伝子を導入し、CAR発現キラーリンパ球に分化させるための臨床用の製造プロセスを確立し、FiTから臨床用製剤を供給する体制構築を目指すという。
キリンホールディングスは、CiRAが実施するiPS細胞ストックから、がんの細胞治療に用いる臨床試験用の免疫細胞製造をサポート。同社は、この共同研究を「医の周辺領域への価値創造」と位置付け、品質の保証されたiPS細胞由来の臨床試験用細胞を、難治性の疾患を患う患者に届けるサポートをするとともに、細胞加工技術をキリングループにおける新たな事業基盤づくりにつなげていくとしている。
CARによるがん免疫療法は実用化が始まっているが、患者ごとの製造が必要となる自家移植が中心でコストの面などに課題がある。「iPS細胞ストックを用いた同プロジェクトを進めることによって、安定した品質での細胞治療を可能にするとともにコスト削減につながることを期待する」と、CiRAの山中伸弥所長は述べている。
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