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インフルエンザウイルスの新たな抗原性変化を明らかに−東大医科研

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2019年03月22日 PM12:30

NAタンパク質の側面になぜ高頻度に変異が生じているのか

東京大学医科学研究所は3月19日、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼタンパク質(NA)の「側面領域」を認識する抗体は、NAの酵素活性を阻害しないが、ヒトの免疫細胞を活性化することで感染防御に寄与することを発見したと発表した。この研究は、同大医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Microbiology」に掲載されている。


画像はリリースより

A型インフルエンザウイルスの粒子上には、2種類の糖タンパク質(HAとNA)が存在する。HAが細胞表面上の受容体であるシアル酸に結合することでウイルスの侵入が開始され、NAがシアル酸を切断すること(シアリダーゼ活性)で子孫ウイルスが放出される。これまで、HAに対する抗体がインフルエンザウイルスの感染防御に主に寄与していると考えられてきたが、近年の研究によりNAに対する抗体も感染防御に重要であるとわかってきた。感染防御に働くNA抗体として、NA蛋白質のシアリダーゼ活性を阻害する「NI活性」をもつ抗体が注目され、感染防御機構などの解析が行われてきた。そのなかで、一部の抗NA抗体はNI活性に加えて、Fc受容体を介した免疫細胞(、好中球およびナチュラルキラー細胞など)の活性化により、感染防御に寄与することも明らかとなっている。

インフルエンザウイルスは、感染を防御する抗体から逃れるために、抗原部位にアミノ酸変異を生じ、抗原性を変化させる。実際に、過去の流行株のNAを調べ、シアリダーゼ活性部位周辺に高い頻度でアミノ酸変異が生じていることを確認している。一方で、シアリダーゼ活性部位から離れている「NAの側面領域」にも高頻度にアミノ酸変異が生じていることもわかっているが、これらの領域に、高頻度でアミノ酸変異が生じる理由は不明だった。

NA側面を認識する抗体はFcを介した防御免疫を誘導

今回の研究では、インフルエンザウイルス感染患者からNAに対するモノクローナル抗体を7種類作製し解析を行った。まず、抗体の認識部位を同定するため、さまざまな分離株に対する反応性をもとに変異ウイルスを作製し、抗体の結合性を検証した。その結果、NA側面のアミノ酸変異により結合が消失する抗体、すなわち、NAの側面部位を認識する抗体が得られた。

次に、この抗体がNI活性を持つかどうかと、マウスを致死的なウイルス感染から防御できるかどうかを検証した結果、一部の抗体は NI活性を示さなかったものの、Fc受容体を介した免疫細胞の活性化によりウイルス感染からマウスを防御できることが明らかとなった。また、感染患者の血清を調べることで、NA側面部位に対する抗体が感染により誘導されることを発見し、さらにNA側面の抗原性が変化していることも明らかにした。

NA側面の変異が側面を認識する防御抗体の選択圧により起きていたことが判明

以上の結果から、NAの側面領域を認識し、NI活性を持たない抗体も免疫細胞を活性化することで生体での感染を防御することがわかった。また、NA側面のアミノ酸変異の蓄積も感染防御活性を持つ抗体の選択圧により引き起こされていることが示唆された。

NAの抗原性を正確に評価することは、効果的なワクチン株の選定において非常に重要となる。現在、NAの抗原性はNI活性を指標として解析されており、NI活性を持つ抗体の反応性により評価されている。今回の研究成果は、従来のNI活性のみに着目した解析手法ではNAの抗原性を評価するには十分でないことを示唆しており、NI活性を持たないが感染を防御する抗体も含めて検出できる新たな評価方法が必要であることを示していると研究グループは述べている。

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