■数字ありきの議論にはクギ
厚生労働省医薬・生活衛生局の宮本真司局長は、本紙の取材に、薬剤師に対する服薬期間中のフォローの義務付けや、機能別の薬局の知事認定制度などを盛り込んだ医薬品医療機器法(薬機法)改正に伴い、「処方箋40枚につき薬剤師1人」を薬局に置く省令を見直す考えを明らかにした。宮本氏は、薬機法改正で地域の特性に応じた機能を持つ薬局が出てくることなどを踏まえ、「一律で40枚ということの合理性がない」と指摘。ただ、見直しに当たっては「40枚より増やすとか、減らすとかそういう簡単な話ではない」とし、調剤業務の機械化や地域の人口構造の変化などを踏まえ、「考え方の整理が必要になる」との認識を示した。
現行の省令では、1日平均40枚の院外処方箋に対して薬局に薬剤師を1人配置することを求めているが、宮本氏は「薬局の業務が『モノからヒトへ』という流れになったとき、一体、薬剤師は何をすべきかということになるし、調剤の中で薬剤師がどこまでを担うのかという話も出てくる」と指摘。そうした中で、「処方箋枚数の制限を40枚とか単なる数字で捉えることは疑問」との認識を述べた。
今回の薬機法改正により、「薬剤師が本来、何をすべきかが明確になり、薬局も地域によって持つべき機能が変わってくる。そうしたことを踏まえると、全国一律で40枚ということの合理性がない」と説明。さらに、「そもそも40枚が妥当かという問題もある。そういう意味で見直しの検討はやらざるを得ないということだと思う」との考えを示し、40枚制限見直しの必要性を強調した。
薬剤師配置基準の見直しに当たって、宮本氏は「単純に40枚が50枚、60枚になれば良いのかという話ではない。しっかりとした考え方や将来見通しがないところで、いたずらに数字を変える話にはならない」とクギを刺した。
宮本氏は、薬機法改正に伴い、地域連携薬局、専門医療機関連携薬局、健康サポート薬局など、様々な機能を持った薬局が出てくることが予想されることに触れ、「多くの薬局が地域の中で患者さん目線で必要な機能を持つようになる」と説明。
具体的な枚数を検討するに当たっては、「地域ニーズを満たした薬局がどれだけ出てきて、地域連携がどれだけできるかなど、少子高齢化の状況や薬局業務そのものの効率化などを踏まえつつ、考えていかなければならない」とした。
その上で、「調剤の多くの部分が機械化されていく状況や地域の人口構造が大きく変化している実情なども考慮した上で、具体的な枚数は決まってくるのではないか」と見通した。
宮本氏は、「地域や薬局によって状況が大きく異なるので、一律40枚を見直すという話だが、考え方の整理がない状況で40枚より増やすとか減らすとか、そういう簡単な話はあり得ない」と重ねて強調した。
厚労省は、薬機法改正案の施行までに、薬剤師資格がなくても薬剤師の監督下で行うことができる調剤業務の範囲について考え方を整理する方針も示しており、薬剤師の配置基準見直しは、個別の法改正事項と共に、現場の薬局業務に大きな影響を与えそうだ。
1日平均40枚の院外処方箋に薬剤師1人を薬局に配置する省令をめぐっては、院外処方箋1枚の調剤に要する薬局薬剤師の業務時間が平均12分前後に達するとした調査結果が現状に「概ね合致している」と分析した厚生労働科学研究班「薬局・薬剤師の業務実態の把握とそのあり方に関する調査研究」(研究代表者:桐野豊元徳島文理大学学長)がある。
15年度に実施した薬局のタイムスタディ調査の結果で明らかになったもので、研究班も「今後は対人業務にシフトする中で、1処方箋当たりの時間が増えるのか減るのか、薬剤師の業務の見直し等の中で引き続き検討すべき」としていた。