冠攣縮性狭心症の人種差を明らかにした世界初の国際共同研究
東北大学は3月6日、冠攣縮性狭心症患者では、臨床的特徴に欧米人と日本人の間に明らかな差異があり、また、長期予後を検討した結果、日本人患者に比べ欧米人患者で冠攣縮発作による不安定狭心症入院や心臓死がより多く発生していることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授、高橋潤講師、佐藤公一医師らの研究グループによるもの。研究成果は「International Journal of Cardiology」に掲載されている。
画像はリリースより
冠攣縮性狭心症は、心臓を栄養する冠動脈の血管平滑筋が一過性に過剰収縮することで心筋虚血を生じ、狭心痛を発症する疾患。時として急性冠症候群や重症不整脈、心臓突然死など重大な心臓病の原因となることが明らかにされている。
研究グループは、これまでの基礎的・臨床的研究から、冠攣縮性狭心症の病態、新しい診断方法、治療経過に関わる因子を明らかにしてきた。従来、欧米人に比べ、アジア人で有病率が高いとされてきた冠攣縮性狭心症だが、近年、欧米でも冠攣縮性狭心症に関する研究が盛んに行われるようになり、欧米人においても、その有病率はこれまで考えられていた以上に高いことが明らかになった。しかし、冠攣縮性狭心症患者の人種的な差異については未だ不明の点が多く、同じ診断基準で診断された欧米人患者と日本人患者の臨床像や長期予後を前向きに比較検討する研究はこれまでなかった。
日本人では、男性の比率、喫煙者の比率高く
今回、研究グループは、冠攣縮性狭心症に関する国際多施設共同前向き登録研究を実施。2010年1月~2014年の12月までの間に国内外の42施設で、日本人1,460症例、欧米人201症例の合計1,661症例が登録され、その中の1,460例について前向きに臨床経過を観察した。
その結果、診断時の登録データでは日本人の方が男性の比率が高く、喫煙者の比率が高いことがわかった。また、日本人の胸痛発作の出現時間は、冠攣縮性狭心症に特徴的な夜間から早朝にかけて多かったのに対し、欧米人の胸痛発作には好発時間は認められず、終日発作が発生しているという特徴が明らかになった。
さらに、治療薬に関しては、日本人では冠攣縮性狭心症治療の第一選択薬であるカルシウム拮抗薬が96%の症例で処方されていたのに対し、欧米人では86%にとどまり、代わって硝酸薬やスタチン、ACE阻害薬、β遮断薬の処方率が高いという特徴が認められた。
長期予後に関しては、日本人に比して欧米人において冠攣縮発作による不安定狭心症入院や心臓死がより多く発生していた。また、冠攣縮研究会リスクスコア(JCSAリスクスコア)は、日本人のみならず欧米人においても長期予後を明確に予測できることを初めて明らかにした。
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