「1遺伝子1検査」から「マルチ遺伝子診断」へ
国立がん研究センターは2月27日、サーモフィッシャーサイエンティフィックジャパングループライフテクノロジーズジャパン株式会社からの委受託研究として、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた遺伝子診断システム(「オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム」)の臨床性能評価を、全国肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」に蓄積された検体、遺伝子解析データを活用して行い、その結果に基づいて、同診断システムが複数の遺伝子の診断法として厚生労働省から追加承認されたと発表した。
画像はリリースより
これまでの遺伝子診断法は、個々の遺伝子をひとつずつ検査する「1遺伝子1検査」の方法が用いられてきた。しかし、この方法で複数の遺伝子を診断するには、多くの時間と検体量を要するため、全ての遺伝子異常を確認する前に、従来の薬物療法を開始しなければならない場合が多々見受けられる。このため、現在の肺がん診療ではこれらの遺伝子を、より早く、より少量の検体で診断する方法が求められていた。
良好な臨床性能が確認でき追加承認
「LC-SCRUM-Japan」は、国がん東病院の後藤功一呼吸器内科長が研究代表者となり、全国の医療機関、製薬企業と多施設共同研究として実施している遺伝子スクリーニング事業。2013年より肺がん患者を対象に、治療標的遺伝子のスクリーニングを継続しており、これまでの6年間で全国約260施設7,000例を超える肺がん患者の遺伝子解析を実施してきた。この大規模な遺伝子解析データを基に、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた遺伝子診断システム(「オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム」)の臨床性能評価を行ったところ、同診断システムは、複数の肺がん標的遺伝子について、極めて良好な診断性能を有していることが示された。
この結果に基づいて、このたび、同診断システムの適応が追加承認され、これまでのBRAF遺伝子に加えて、EGFR、ALK、ROS1の遺伝子診断が可能となり、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、アレクチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブの計8種類の分子標的薬における治療適応を同時に判定できるようになった。
保険償還も検討へ
今回の診断システムの追加承認によって、これまで多くの検査時間と検体量を使いながら、1つずつ診断してきた複数の標的遺伝子を、一度の解析で同時に診断することが可能になり、より迅速に、かつ多くの患者に有効な分子標的治療薬を届けることが出来るようになるという。
なお、今回の追加承認に基づいて、今後、マルチ遺伝子診断法として同診断システムの保険償還が検討される予定。
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・国立がん研究センター プレスリリース