鳥類では存在が知られていた気圧を感じる器官
愛知医科大学は1月28日、マウスの内耳の前庭器官に気圧の変化を感じる場所があることを、世界で初めて突き止めたと発表した。この研究は、同大医学部の佐藤純客員教授のグループが、中部大学生命健康科学部と日本獣医生命科学大学獣医学部との共同で行ったもの。研究成果は、「PLOS ONE」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
鳥類には気圧を感じる器官が耳に存在することがわかっている。そして、この器官を使って自分の飛んでいる高度を認知したり、雨が降るなどの気象変化を予見したりしていると考えられている。一方、ほ乳類に気圧を感じる能力があるのかは明らかになっていないが、「猫が顔を洗うと雨が降る」などの言い伝えがあり、人間においても「天気が崩れると頭痛がする、喘息が出る」、「古傷が痛むので明日雨が降る」など、臨床家の間ではよく知られた事実があることから、他の動物と同じように人間も気圧の変化を感じている可能性があると言われてきた。
佐藤教授らは以前より、天気の崩れで気圧が変化すると、内耳がその変化を感じ取って脳に伝え、その結果、さまざまな疾患が発症したり悪化したりするという仮説を提唱してきていた。
気象病や天気痛の有効な治療法の確立に期待
研究グループは、マウスを人工的に気圧が変えられる装置に入れ、天気の変化に相当する微小な低気圧に一定時間暴露。その後、脳を取り出し、内耳の前庭器官からの感覚情報を中継する延髄の前庭神経核細胞の活動を観察した。すると、前庭神経核のうち、主に半規管(一部、球形嚢)からの情報が集まる上前庭神経核細胞において、神経細胞が興奮すると増える特殊なタンパク質(c-Fosタンパク質)が細胞内に増加していることを発見。一方、他の部位からの感覚情報が集まる神経核細胞に変化はなく、気圧の変化を与えていないマウスでも変化は見られなかったという。これらの結果から、人間も同様に、天気の崩れによって前庭器官が気圧の微妙な変化を感じ取り、その情報が脳に伝わることで、古傷や持病の痛みが起きたり、めまいや気分の落ち込みといった不調が起こったりすると考えられるという。
今回の研究成果により、平衡感覚のみを感じていると考えられてきた内耳の半規管に気圧の変化を感じる能力があることが明らかになった。研究グループは「今後も研究を続け、どのようなメカニズムで前庭器官が気圧の変化を感じ取るのかを明らかにしていきます。また、このメカニズムを明らかにすることで、気象病や天気痛の有効な治療法の確立に繋げていきます」と、述べている。
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