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感染抵抗性や抗腫瘍効果を高める11種類の腸内細菌株を同定・単離-慶大

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2019年01月28日 PM01:15

免疫系や生理機能に強い影響を与える消化管の常在細菌

慶應義塾大学は1月24日、健常者の便中から、病原性細菌に対する感染抵抗性や抗がん免疫応答を高める11種類の腸内細菌(11菌株)を同定・単離することに成功したと発表した。この研究は、同大医学部微生物学・免疫学教室の本田賢也教授を中心とする共同研究グループによるもの。研究成果は「Nature」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

消化管には多様な常在細菌が存在し、ヒトの免疫系や生理機能に強い影響を与えていることが知られている。そのため、消化管常在菌はさまざまな疾患に対する新しい治療法・予防法の標的として注目されている。しかし、宿主の免疫系を調節するヒト由来の腸内細菌株はわずかしか同定・単離されておらず、なかでも、(CD8T細胞)腸内細菌の関係は、ほとんど明らかにされていなかった。

同研究グループは、病原性微生物の排除や腫瘍免疫の中心を担うCD8T細胞を活性化させる腸内細菌株の同定・単離を目指して研究を開始。過去の実験では、腸内や皮膚に常在細菌が存在するSPFマウスと無菌マウスを比較。その結果、SPFマウスの消化管にはインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生するCD8T細胞が多く局在するのに対し、無菌マウスではその細胞数が著しく少ないということを明らかにしている。

極めて稀少な11細菌株、新たな予防・治療シーズとして期待

研究グループは以前の実験の結果より、CD8T細胞は活性化するとIFNγを産生するが、マウスの腸内常在菌がCD8T細胞を活性化させ、IFNγ産生を誘導しているのではないかと推察。マウスを使って検証を行った。

まず、健常者の便サンプルを無菌マウスに投与し、IFNγ産生CD8T細胞が誘導されるかを解析。6名の健常ボランティアの便を別々の無菌マウスに投与し同細胞数を調べたところ、投与した便によって誘導される細胞数に大きな違いがあることがわかった。その中でも最も強い誘導が見られたドナーBの便サンプルを投与したマウスに着目。B便投与マウスのなかでも最も強い誘導を示した個体を解析した結果、ドナーB便の腸内細菌叢から単離した11菌株が、IFNγ産生CD8T細胞の誘導に中心的な役割を担うと考えられた。さらに詳細な解析により、少なくとも一部のIFNγ産生CD8T細胞は、11菌株に由来する抗原を認識することがわかった。

この11菌株をマウスに投与したところ、病原性細菌に対する感染抵抗性や抗がん免疫応答、抗腫瘍効果が強まることが明らかになった。また、腸管のIFNγ産生CD8T細胞が11菌株由来の抗原を認識するのに対し、腫瘍部のIFNγ産生CD8T細胞は11菌株由来抗原を認識せず、がん抗原を認識することから、腸管で誘導されたIFNγ産生CD8T細胞が直接腫瘍へ遊走するのではなく、11菌株由来の代謝産物が腸管で吸収され血流に乗って全身を巡り、腫瘍部のCD8T細胞を活性化するなど別のメカニズムを介して腫瘍部に集積しているのではないか、と考えられているという。これら11菌株は極めて稀少な細菌株であり、今回単離した11菌株は、宿主の生理機能調節に応用可能な、非常に貴重な細菌株であるという。

研究グループは「本研究では、IFNγ産生CD8T細胞を強力に誘導する11菌株を単離し、それらの投与が感染症や腫瘍増大を抑制することを、マウスを用いて示した。これらの11菌株は感染症やがんに対する新たな予防・治療シーズとなり得る」と、述べている。

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