早期手術選択の見極めが困難な「僧帽弁逆流症」
国立循環器病研究センターは12月14日、無症状で心機能の保たれた僧帽弁逆流症(器質性)患者における、心エコー図検査を用いた新たな予後予測指標を発見したと発表した。この研究は、国循心不全科の岡本千聡医師、岡田厚医師、泉知里部長らの研究チームによるもの。研究成果は「Heart」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
高齢化の進展により弁膜症の患者数は増加しており、僧帽弁逆流症は最もよくみられる弁膜症のひとつ。弁膜症を発症しても長期間無症状であることが多く、これまでは心機能が低下したり心房細動や肺高血圧症などの合併症が生じたりした場合に、手術を検討していた。しかし、最近になり弁形成術の成績向上や低侵襲化を背景に、症状が出る前の早期手術を勧める報告も相次ぐ一方で、どのような症例に早期手術を選択すべきかは、十分に解明されていない。
E波の測定が心血管イベントの予後予測指標になる可能性
研究チームは、国循で2012~2015年までに心エコー図検査を実施した僧帽弁逆流症患者1,312名のうち、無症状の器質性僧帽弁逆流症患者188名について、僧帽弁通過血流速度と予後の関係について解析。その結果、僧帽弁通過血流速度のE波が大きい患者ほど、心血管死やうっ血性心不全、左室機能低下、心房細動、肺高血圧症などの心血管イベントを有意に多く発症することが明らかになったという。
E波の測定は、他の心エコーによる逆流の評価法と比べて、より簡便かつ測定者間での誤差が非常に少ないため、今後、適切な治療時期や治療法を検討するにあたり、広く活用できる指標となると考えられる。また今後、僧帽弁逆流症の治療指針となる弁膜症治療ガイドライン策定などにも役立つことが期待される。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース