日本消化器内視鏡学会の要望で早期承認
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は、急性膵炎の局所合併症である膵仮性嚢胞(PPC)および被包化壊死(WON)に対する日本初の内視鏡的治療専用システム「Hot AXIOSシステム」を発売。11月28日に都内で新製品発表会を開催した。東京医科大学消化器内科学分野主任教授で東京医科大学病院副院長兼診療部長の糸井隆夫氏が講演した。
画像はリリースより
急性膵炎は、膵液が膵臓自体を溶かしてしまう急性炎症。アルコール摂取による膵臓への過剰な負担や、胆石による膵液の流れの悪化などによって生じる。重症化すると10%が死に至るといわれている。食生活の欧米化などから患者数は増加傾向にあり、2011年の全国調査の結果では推定6万3,080人とされている。
同システムは、日本消化器内視鏡学会が厚生労働省へ医療ニーズの高い医療機器として早期導入に関する要望書を申請し、優先審査対象製品として審査された後、早期に承認された。同システムは、胃壁または腸壁に密着している症候性PPCまたは70%以上の液体成分を認める症候性WONに対し、経胃または経十二指腸的な内視鏡治療に使用される。9月1日に保険収載され、償還価格は49万3,000円。なお、同システムを使用する医師には、講習プログラム(座学、ハンズオントレーニングなど)を受けることが義務づけられている。
一期的な瘻孔形成手技の実現と手技時間短縮に貢献
東京医科大学消化器内科学分野主任教授
東京医科大学病院副院長兼診療部長
糸井隆夫氏
同システムの特徴は大きく3つある。1点目は、一期的な瘻孔形成手技の実現と手技時間を短縮するデリバリーシステム。システム先端部に通電部があり、併用医療機器を用いることなく一期的な瘻孔形成手技を可能にする。機器の交換による合併症のリスク低減と手技時間の短縮が期待される。2点目は、広い内腔による高いドレナージ効果とスムーズなネクロセクトミーが可能な点。瘻孔形成補綴材の広い内腔径(Φ10/15/20mm)により、壊死物質等による内腔の閉塞リスクの低減と高いドレナージ効果が期待できるという。また、広い内腔径を確保することで、内視鏡挿入等のアクセスポートになるため、瘻孔拡張を行わずにネクロセクトミーを可能にする。3点目は、大きなフランジの高い把持力により逸脱リスクを低減する点。両端の大きなフランジが高い把持力を発揮し、瘻孔形成補綴材の移動および逸脱のリスクを低減するという。また、瘻孔形成補綴材全体のフルカバーにより、組織との癒着を防止するため、治療後の抜去が簡易になる。
これまで、急性膵炎後のう胞ドレナージに対するAXIOS留置手技では、穿刺→ガイドワイヤー挿入→瘻孔拡張→ステント留置、というステップが必要だった。糸井氏は、同システムの使用で「(従来の治療と比べて)One-stepの留置が可能となるのでミスが減り、かつ短時間で確実なステント留置ができる」と解説。「患者さんにとても優しい」と、侵襲性の低さも評価した。
同社によれば、急性膵炎患者のうち重症化し、ドレナージが必要となる患者は約1,500人。糸井氏は、「多くの症例は内視鏡的ドレナージ/ネクロセクトミーで治療可能」とし、治療率90%以上という報告もあると解説した。