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阪大と国立遺伝研 DNAを放射線から守る新しいメカニズムを解明

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2013年10月21日 PM03:02

国立遺伝学研究所などの研究チームが発表

大阪大学の髙田英昭助教(元・国立遺伝学研究所研究員)と大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の前島一博教授らの研究チームは10月10日、生物がもっている、有害な放射線からDNAを守る新たなメカニズムを解明したと発表した。放射線の影響の正しい理解や、がん治療などの応用につながると期待されている。

地球上の生物は、常に自然界からの放射線を浴びている。放射線はDNAの切断を引き起こすため、そうした環境ストレスからゲノム情報を守ることは生死に関わる重要な問題だ。これまで、DNAが集まって凝縮している状態を保つことが、DNA損傷を防いでいると推測されてきたが、その厳密な検証にはいたっていなかった。

新たな方法でDNA損傷を定量的に検出・解析可能に

今回、研究チームは、DNAの凝縮状態を自在に変化させることと、DNA損傷を定量的に検出できるシステムを構築することに成功した。まず、DNAが含まれる核をヒトの培養細胞からそのまま取り出し、カバーガラスの上に貼りつける。DNAは核の中で保護されているため、この核を貼りつけたままのカバーガラスをさまざまな反応溶液に浸すことで、従来問題となってきた実験操作に基づくDNAへの物理的損傷を避けることができるようにした。

DNAの凝縮状態を変化させるには、二価陽イオンのマグネシウムイオンを用いたという。DNAのリン酸基は負電荷をおびているため、リン酸基の負電荷同士では反発しあい、凝縮しにくくなる。ここにマグネシウムイオンを加えると、このDNAに含まれる負電荷が打ち消されるため、密に凝縮した状態を導きだせる。逆に、EDTAを加えると、マグネシウムイオンが取り除かれるため陽電荷が打ち消され、DNAは分散する。

研究では、この方法で凝縮状態を変化させた核を用意し、放射線(ガンマ線)を照射、DNA切断がどのくらい起こっているかTUNELアッセイにより検出、高性能CCDカメラで測定し、解析を行ったという。

すると、DNA損傷は凝縮状態の違いと非常に深く関わっており、細胞の間期の核における凝縮状態では、凝縮していない状態に比べ、16倍もの放射線耐性を得ることができた。また、細胞分裂期のきわめて高度に凝縮した状態のクロマチンでは、凝縮していない状態に比べると、50倍もの放射線耐性があったそうだ。

なぜこのような結果に?

放射線によるDNA損傷の主な原因は、放射線によって水分子が開裂することによって発生する、ヒドロキシルラジカルにあると考えられている。実際、ラジカル発生を抑制するラジカルスカベンジャー存在下では、凝縮状態に関わらず、DNA損傷はほとんど検出されていない。

ヒドロキシルラジカルの寿命は短く、DNAと離れた場所で発生しても損傷を与えることはできない。よって、クロマチンが凝縮し、DNAのまわりの水分子数が少なくなっていると、放射線が照射されたとき、DNAのまわりで発生するヒドロキシルラジカル数も少なくなり、DNA損傷が抑制されると考えられる。

また、研究チームによると、この凝縮によるDNAの保護は、放射線(ガンマ線)からだけではないことも明らかになったそうだ。まず、重粒子線がん治療装置を用い、間期核のクロマチンに重粒子線を照射したところ、クロマチンが凝縮することでDNA損傷が抑制されることが確認された。さらに、抗がん剤として用いられるシスプラチンのDNA結合量を誘導結合プラズマ質量分析計で調べたところ、クロマチンが凝縮するとシスプラチンのDNAへの結合量が減少したという。このように、クロマチンの凝縮がDNAの損傷を防ぐという性質は、放射線に限らない、一般的性質であることが強く示唆された。

この研究成果を活かした医療としては、クロマチンの凝縮をヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(TSA)などを用いて緩めたうえで、これまでの放射線、重粒子線、抗がん剤を用いた処置を行うと、DNAの感受性を増加させられ、より効率の良いがん治療を進めることができると考えられている。

なお、この研究成果は、現地時間10月9日付の米科学誌「PLOS ONE」オンラインに掲載されている。(紫音 裕)

▼外部リンク

大阪大学/国立遺伝学研究所 プレスリリース
http://www.nig.ac.jp/assets/images/

PLOS ONE 該当論文
http://www.plosone.org/article/

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