標準的予防法がない腹膜炎、腹膜線維化と腸管癒着
佐賀大学は11月6日、腹腔内に留置するだけで、長期間に渡り腹膜炎を軽減し、線維化と腸管の癒着を抑制する画期的な糸状の高密度コラーゲン(組織再生糸)の開発に成功したと発表した。この研究は、同大医学部および農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌 「Biomaterials Science」電子版にて公開された。
画像はリリースより
長期間の腹膜透析や腹腔内の手術後には、腹膜の線維化や腸管の癒着が生じることが多い。既存の癒着防止シートは体内に留置後、約1週間程度の作用しかなく、長期間の効果はない。さらにサイズが大きく、繰り返し腹腔内に留置することは困難であり、現状では腹膜炎、腹膜線維化と腸管癒着に対する標準的予防法は未だ確立されていない。
医療施設への導入が容易、早期に臨床試験を開始予定
研究グループは、簡単な操作とわずかな患者侵襲で腹腔内に留置できるデバイスの開発を目指した。そこで、絆創膏型の人工皮膚、貼付型の食道狭窄防止用コラーゲンビトリゲルパッチ「コラーゲンビトリゲル(R)」の開発経験から、創部への留置が簡便で密着性に優れる糸状のコラーゲンビトリゲルを着想。医療用ブタ皮膚由来アテロコラーゲンを原料とする、糸状のアテロコラーゲンビトリゲルを開発した。
この糸状アテロコラーゲンビトリゲルを、実験的腹膜炎動物を用いて治療効果を検証。非治療群、ゲル状のコラーゲンと比較したところ、非治療群では高度の腹膜炎、腹膜線維化、腸管癒着が生じた。ゲル状のコラーゲンでは腹腔内での炎症、線維化、腸管の癒着に対する抑制作用が短期間のみ認められたが、糸状アテロコラーゲンビトリゲル治療群では長期間に渡る抑制効果が認められたという。
同製品は取り扱いが容易な糸状製品であるため、腹膜透析治療や、消化器外科、産婦人科などで行われる腹腔内手術が実施されている医療施設への導入が容易であるという。今後は、製薬企業の共同研究や協力を得て、できるだけ早期に臨床試験を開始する予定としている。
▼関連リンク
・佐賀大学 プレスリリース