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虫歯・歯周病と脳卒中・認知症の関連を検証する世界初の多施設共同研究を開始-国循

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2018年11月06日 AM11:45

日本人口保菌率約10~20%のCnm陽性S.mutansを対象に

国立循環器病研究センター(国循)は11月1日、う蝕原性細菌(Cnm陽性S.mutans)と脳卒中・認知機能障害との関連を検証する多施設共同研究を開始したと発表した。この研究は、同センター脳神経内科の猪原匡史部長、齊藤聡医師、大阪大学大学院歯学研究科の仲野和彦教授、広島大学大学院医歯薬保健学研究科の細見直永准教授らの研究チームによるもの。う蝕・歯周病と脳卒中に関する多施設共同研究は、世界初だという。


画像はリリースより

う蝕の原因となる細菌の中で、S.mutansは最も一般的な細菌だ。これまでの研究成果により、Cnmと呼ばれる特殊なたんぱく質を菌体の表層で発現しているCnm陽性S.mutansを保菌している患者は、そうでない人に比べて脳出血、特に脳の微小出血とよばれる小さな出血が有意に多く見られることが明らかになっている。さらに、Cnm陽性S.mutans保菌患者では単語を思い出しにくくなるとも報告されており、認知機能障害との関連も示唆されている。

過去の研究から日本の人口におけるCnm陽性S.mutans保菌率は約10~20%といわれている。保菌患者への治療介入が実現した場合に年間3万人の脳微小出血が予防可能と推定する研究や、従来高血圧が原因と考えられてきた脳出血の26%でCnm陽性S.mutansの感染が認められたとする研究もあり、Cnm陽性S.mutansの治療介入を行うことでこれらの脳出血が予防できる可能性が示唆されている。しかし、これらの研究は全て単施設による横断研究であるため、国内全体における脳血管疾患予防と歯科衛生の関係を検証するには、地域を限定せず症例を増やして研究を行う必要がある。

国循を中心に全国の10機関で症例の登録と観察を実施

今回の研究では、同意取得1年以内に脳卒中を発症し、抗血栓薬を服用、脳深部に微小出血を有する40歳以上という選択基準を全て満たす300例をCnm陽性群と陰性群に分けて2年間観察し、主要評価項目・副次評価項目を確認する。症例の登録と観察は国循を中心に全国の10機関で行う予定。さらに、Cnm陽性S.mutansの評価に加えて他の主要な歯周病菌の抗体価も測定し、う蝕・歯周病と脳卒中・認知症発症との関連を検証する。Cnm陽性S.mutansの有無についての評価および歯科診療の解析は大阪大学大学院歯学研究科で、血液検体中の歯周病菌抗体価の測定は、広島大学大学院医歯薬保健学研究科で実施する。

日本は、世界有数の長寿国でありながら、2016年の厚生労働省の報告では80歳時点で自身の歯が20本以上の人は半数程度と推定されるなど歯科衛生に関しては改善の余地が大きく、予防歯科の普及は欧米に比べて大きく遅れている。今回の研究により脳卒中や認知症などの脳神経疾患と口腔衛生の関係が明らかになれば、日本の歯科衛生の普及を促す端緒につながると考えられる。また、死因や要介護原因、国民医療費などの多くの割合を占める脳神経疾患の発症予防への手がかりが研究から明らかになれば、高齢社会に大きな福音をもたらすと期待される、と研究チームは述べている。(大場真代)

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