2005年に発見、2009年に新種として報告された病原真菌
帝京大学は10月29日、パンデミック真菌「カンジダ・アウリス」を1時間以内に検出・診断できる遺伝子診断法を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科医真菌学の槇村浩一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米微生物学会の「ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー」9月号に掲載された。
画像はリリースより
北米・欧州をはじめとした全世界で、院内感染としてパンデミックが生じている新種の病原真菌カンジダ・アウリス(学名:Canidida auris)が問題となっている。同菌は、2005年に東京で初めて発見され、同大が2009年に新種として報告した病原真菌(酵母)だ。この菌は多くの薬剤に耐性(多剤耐性AMR)があるうえ、病原性・致命率が高いことが知られているが、限られた高価な機器を使用しなければ感染の診断ができず、有効な対策が取れなかった。
国内での流行に備え、流行地における実証試験を予定
今回開発された遺伝子診断法「LAMPauris」は、極めて高い感度(プラスミドDNAは2コピー、細胞は10個以上)でカンジダ・アウリスを検出可能。主要病原真菌の中で、同診断法によって検出されたのはカンジダ・アウリスのみであったという。また、通常の検査でカンジダ・アウリスと間違って判定される菌種は、いずれも同診断法で検出されなかったとしている。
同診断法によれば、患者から得られた検体だけではなく、さまざまな微生物に汚染された院内環境から得られた検体からであっても、カンジダ・アウリスの有無を直接調べることが可能だ。検査に必要な時間は1時間以内、費用は実費として1検体1,000円程度だという。
同診断法の開発にあたっては、カンジダ・アウリスの全ての遺伝子情報を調べ、同菌にだけに見つかるDNA塩基配列を標的とした。遺伝子増幅法は、日本で開発され、一定の温度で迅速・特異的に標的DNA塩基配列を検出できる「LAMP法」を用いるため、迅速・高感度・高精度であり、検出に必要となる機械も安価だ。今後は、海外研究機関の協力の下に、流行地における実証試験が予定されている。
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・帝京大学 プレスリリース