7番染色体の片方にある約28個の遺伝子が欠損する疾患
京都大学は10月26日、遺伝子の欠損によって発症するウィリアムス症候群において発現が変動する遺伝子を探索し、複数の遺伝子群(モジュール)が病態に関わっていることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の木村亮助教、萩原正敏教授らの研究グループが、同大医学部附属病院小児科・精神科、同大人間環境学研究科、大阪市立総合医療センター、東大寺福祉療育病院、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校と共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Child Psychology and Psychiatry」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ウィリアムス症候群は、1万人に1人の頻度で生じ、特徴的な顔貌、発達や知的な遅れ、過度な社交性、心血管異常、糖尿病など多彩な症状がみられる疾患。この病気では、7番染色体の片方にある約28個の遺伝子が失われていることが知られている。これまで、これら失われた遺伝子に着目した研究が進められてきたが、症状と遺伝子との関係については、十分に明らかにされていなかった。そのため、他のアプローチによる研究が待たれていた。
失われた遺伝子以外でも広範囲にわたって発現の変動が
研究グループは、患者家族会(エルフィン関西)などの協力を得て集めた多数の検体に、トランスクリプトーム解析という方法を用いて、すべての染色体上の遺伝子の発現変動を調査。その結果、ウィリアムス症候群では、遺伝子が失われた場所だけでなく、広範囲にわたって遺伝子の発現に変動があることが明らかになった。そこで、似たような変動パターンを示す遺伝子をグループ化して抽出・調査した結果、複数の遺伝子群(モジュール)が病気や症状と関連していることが判明。特にウィリアムス症候群と最も強い相関を示したモジュールは、失われた遺伝子以外で構成されており、免疫系と関連していることが明らかになった。さらに、このような大規模な遺伝子の発現変動が生じる要因のひとつとして、マイクロRNAが関わっている可能性を見出した。
失われた遺伝子以外の遺伝子が病態に関与していることが初めて見出されたことで、同疾患に対するさらなる理解と将来的な治療法の開発につながると期待される。研究グループは、ウィリアムス症候群の患者の脳でも今回と同じような遺伝子の変化がみられるのかについて関心を持っており、患者の細胞から作成したiPS細胞を神経などに分化させて調べるような研究を準備中だとしている。
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・京都大学 研究成果