急性期と回復期で正反対の働きをするマクロファージや単球
東京薬科大学は10月9日、炎症や組織傷害の回復期に出現する新しい単球細胞を発見したと発表した。この研究は、同大生命科学部免疫制御学研究室の池田直輝大学院生(現・北海道大学遺伝子病制御研究所助教)、浅野謙一准教授、田中正人教授の研究グループが、理化学研究所、兵庫医科大学、熊本大学と共同で行ったもの。研究成果は、「Science Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
ヒトの炎症応答は、感染症だけでなく、心筋梗塞などの臓器虚血や自己免疫疾患などでも誘導され、組織傷害を悪化させてしまう。そのため、原因が排除された後は速やかに炎症をしずめ、損傷した組織を修復する必要がある。マクロファージおよび単球と呼ばれる白血球の一種は、この急性期の炎症の誘導と、回復期の炎症収束・組織修復の両方に働く免疫細胞であると考えられてきた。しかし、同じ種類の細胞がどのようにして、急性期と回復期で正反対の働きをするのかは不明だった。
炎症や組織傷害の回復期に出現するYm1陽性単球を発見
研究グループは、炎症収束・組織修復を担うマクロファージに発現することが報告されているYm1というタンパク分子に着目。Ym1を発現する細胞を蛍光標識したマウス(Ym1-Venusマウス)を作製・解析することで、炎症や組織傷害の回復期に出現する新しい単球細胞(Ym1陽性単球)を発見した。
この細胞は、健常時や炎症・組織傷害の急性期にはほとんど存在しないが、回復期になると骨髄で盛んに作られ、血液中に送りだされる。この単球細胞が組織傷害部位に集積すると、炎症抑制や組織修復に関わるタンパク分子を産生し、傷ついた組織の修復に寄与。また、この単球細胞を消去したマウスでは、腸炎の回復が遅延したことから、この細胞が炎症収束や組織修復に担う役割の重要性が証明されたとしている。
Ym1陽性単球は、炎症を抑制し組織修復を促す働きがあることから、研究グループは、「Ym1陽性単球を効率よく増やすことができる方法が発見できれば、将来的に、傷害臓器の修復促進治療薬の開発につながることが期待できる」と述べている。
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