高齢化が進む日本の循環器診療の実態調査結果を公表
国立循環器病研究センター(国循)は9月19日、日本循環器学会と共同で行っている循環器疾患診療実態調査(JROAD)の結果を公表した。研究成果は「Circulation」に掲載されている。
画像はリリースより
JROADは2004年以降、日本循環器学会により開始された全国調査で、そのデータセンターは国循内に設置され、ウェブを用いて各施設が調査項目に回答する形式をとっている。2012~2016年の調査では、循環器専門医研修施設および研修関連施設(n=1298-1343)の登録率100%を達成している。
救急疾患として重要な急性心筋梗塞症の全国の入院患者数は、2012年の約6万9,000人から2016年には7万3,000人と微増しており、この間の入院中の死亡率は約8%だった。一方、同じ救急疾患として2015年より調査を始めた急性大動脈解離に伴う入院患者数は、2015年で2万406人、2016年で2万2,171人、院内死亡率は約11%。さらに心不全による入院患者数で、2012年の約21万人から2016年には約26万人と、毎年1万人ずつ増加している実態が明らかとなった。
心血管疾患と脳血管疾患の合併頻度は約10%
日本循環器学会ではJROAD参加病院の任意協力のもと、2014年より診断群分類包括評価(DPC)データを匿名のうえ収集しデータベースを構築する事業(JROAD-DPC)を行っている。DPCデータには、診療報酬データのほかにも治療内容や予後などの標準化された患者単位の情報が含まれる。70万4,593件の診療録情報(2012.4-2013.3入院)を解析すると、心不全患者10万8,665例が抽出され、その平均年齢が男性75歳(53%)、女性81歳(47%)と、特に高齢女性の心不全患者が多いという実態が明らかになった。また、心血管疾患と脳血管疾患の合併頻度は約10%で、これら多疾患罹患患者への治療体系の確立が、今後の大きな課題であると考えられるという。
JROAD/JROAD-DPC研究は、日本循環器学会と国循の共同で推進されており、同データベースより得られる多くの知見が、日本のみならず世界の循環器診療に寄与することが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立循環器病研究センター(国循) プレスリリース