極めて早時期から公平性に対する高い感受性を持つ赤ちゃん
京都大学は9月19日、赤ちゃんは、良いことをする者は公平に分配することを予期しており、観察する個体の善悪の振る舞いに基づいて公平に分配するか否かを判断することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大文学研究科の板倉昭二教授らの研究グループが、イタリア、スウェーデンの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、スイスの国際学術雑誌「Frontiers in Psychology」のオンライン版に掲載された。
画像はリリースより
近年の研究で、赤ちゃんは極めて早い時期から公平性に対する高い感受性を持っていることが示されている。しかし、善悪の振る舞いと、分配行動の関係は検討されていない。今回の研究では、赤ちゃんが、妨害や援助といった行動と、公平性をどのように結びつけているのかを検討。限られた資源を誰かに分配する場面で、赤ちゃんが、善い行いをする人は公平に分配し、悪い行いをする人は不公平に分配すると思うか否かを調べた。
向社会行動の理解が早い時期に生起することを示唆
今回の研究では、14か月児を対象とし、期待違反法(赤ちゃんは自分が予期しない事象を長く見るという傾向)を用い、先行刺激として、事前に、あるエージェント(動作の主体者)が、他者を助ける場面と邪魔をする場面を見せて、後で、そのエージェントが資源を分配する場面を見せた。その時に、良いエージェントが公平に分配する、良いエージェントが資源を不公平に分配する、悪いエージェントが公平に分配する、悪いエージェントが不公平に分配するという、4つの場面を見てもらい、それぞれに対する注視時間を計測した。
その結果、14か月児は、良いエージェントが不公平に分配した場合には、注視時間が長くなったが、悪いエージェントが公平・不公平に分配しても、注視時間には差が見られなかった。これにより赤ちゃんは、良いエージェントは公平に分配することを期待しているらしいことが判明した。また、赤ちゃんは、分配は公平になされるべきだと考えていることが先行研究で示されていたが、悪いエージェントの行いは、この傾向を弱めることがわかったとしている。
今回の研究によって、赤ちゃんの公平感の知覚に、先行して呈示される善悪の振る舞いが影響を与えることがわかり、赤ちゃんの向社会行動の理解が、早い時期に生起していることが示された。今後は、その他の向社会行動と公平性をどのように関連づけるのか、調べていきたいとしている。
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・京都大学 研究成果