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【鳥取大学】抗体開発の拠点「とっとり創薬実証センター」稼働-独自の染色体工学技術を活用

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2018年09月19日 AM11:00


■製薬各社も入居、共同研究へ

鳥取大学は、独自の染色体工学技術をもとに抗体医薬の開発を目指す「」を本格稼働させた。文部科学省の拠点整備事業に採択されたもので、染色体工学研究センターが約30年にわたる研究で独自開発した人工染色体ベクターを基盤に、完全ヒト抗体産生動物を用いた抗体医薬の開発や疾患モデル動物の作製による既存薬の再開発()につなげる。創薬実証センターには大手製薬企業も入居し、産官学共同研究の体制が整った。プロジェクトの指揮を執る染色体工学研究センター長の久郷裕之教授は、「まず数年で付加価値のある抗体医薬を一つ出すことが最大のミッション」と意気込みを語る。

本格稼働したとっとり創薬実証センター

創薬実証センターは、文科省の地域科学技術実証拠点整備事業に鳥取大と鳥取県で共同提案したもので、これまで大学で築き上げてきた染色体工学の独自技術が評価された。7月から本格稼働した創薬実証センターは3階建て、九つの居室と四つの実験室、オープンラボで構成。既に第一三共、田辺三菱製薬、中外製薬と大手製薬企業が入居しており、今後は染色体工学研究センターの創薬研究・支援部門が中心になって産官学連携の抗体開発プロジェクトを進めていく計画だ。

コア技術である染色体工学は、染色体を人工的に操作する鳥取大発の独自技術。久郷氏らは、天然の染色体から全ての遺伝子を取り除き、染色体の基本構造に必要なセントロメアとテロメアだけ残してベクターとして使う人工染色体を開発してきた。この人工染色体に様々な遺伝子を搭載することにより、医薬品開発に応用できるのではないかと注目されてきた。

実際これまでの研究で、ヒト型薬物代謝モデル動物やダウン症をはじめ希少疾患モデル動物などの疾患モデル動物を開発。また、巨大なヒト抗体遺伝子を人工染色体ベクターに搭載し、マウス、ラットの細胞で発現させて完全ヒト抗体産生動物の作製に成功した。

今回のプロジェクトでは、これらのコア技術をもとに完全ヒト抗体産生動物を用いた新規抗体医薬の開発を目指す。完全ヒト抗体産生動物は1匹数百万円と高額で、研究者が購入することは難しかったが、鳥取大が完全ヒト抗体産生動物をアカデミアで有用なシーズを保有する研究者に無償提供し、共同研究を進めることで新規抗体を作製、大学発ベンチャーを立ち上げて製薬企業に導出するスキームを描く。

もう一つは、ダウン症の疾患モデルラットを用いた既存薬の再開発に着手する。ダウン症ラットを使って既存薬による行動解析実験を行うことで、高感度に効果のある薬剤を評価。動物実験データをもとに候補品の製薬企業への導出を目指す。ドラッグ・リポジショニングにより適用拡大などのメリットが期待されるという。

久郷氏は、「染色体工学技術はわれわれが30年かけてノウハウを蓄積してきたオリジナルの技術であり、他の大学が追随することは難しい」と競争力の高さをアピール。「まず数年で付加価値のある抗体医薬を一つ出すことが最大のミッション」と目標を打ち出す。一方で、大学としては人材育成も重要とし、創薬と両輪で次世代の染色体工学を担う基礎研究者を育て、抗体医薬の導出で得られた資金を研究費に充てる好循環を回していきたい考えだ。

既に鳥取大は、染色体工学技術のプラットフォームを集結させた「とっとりバイオフロンティア」を設置し、大学発ベンチャーの立ち上げやコア技術の導出を目指してきた。今回、抗体医薬の開発を目指す「とっとり創薬実証センター」を始動させたことで、さらにバイオ産業の集積化を進めていく構想を描いている。将来的には、鳥取県に染色体工学技術を核にしたバイオクラスターを形成し、雇用創出を含めた地域活性化につなげたい考えだ。

染色体工学研究センター長の久郷教授
  • 染色体工学研究センター長の久郷教授
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染色体工学研究センター長の久郷教授

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