「ヒュミラ」「マヴィレット」が成長を牽引
アッヴィ合同会社のジェームス・フェリシアーノ社長は8月29日、都内で会見し、同社の2018年売上高が前年比で2桁成長率を記録し、国内製薬企業の売上高ランキングでトップ20入りをする見込みであることを明らかにした。とりわけ、今年上半期に自己免疫性疾患での抗TNFα抗体「ヒュミラ」、NS5A阻害薬とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の合剤であるC型肝炎治療薬「マヴィレット」が伸長したことが大きな要因。
フェリシアーノ社長は、今後ヒュミラのさらなる適応拡大などによる価値最大化に加え、インターロイキン23(IL-23)阻害薬のリサンキズマブやヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のウパダシチニブなど新たな化合物の投入により、免疫領域でのポートフォリオを充実する方針を示し、「このことにより競合優位性でベストなポートフォリオを持つことが可能になると確信している」と強調。さらには血液がん領域を軸にオンコロジーへの進出を図り、持続的な成長を続けていくとの抱負を語った。
会見でフェリシアーノ社長は、アッヴィ発足から5年間が経過し、日本市場での同社の2017年売上高で845億7100万円まで伸長してきたことを説明。この5年間の薬価ベースでの年平均成長率は8.9%と「日本市場の年平均成長率1.7%と比べるとかなりの成長」と評価した。成長の背景について、発足当時からの製品である「ヒュミラ」、抗RSウイルス抗体製剤「シナジス」での適応拡大などによる価値最大化に向けたライフサイクルマネジメントの成功に加えて、肝炎領域での「ヴィキラックス」や「マヴィレット」、中枢神経系でパーキンソン病治療薬の「デュオドーパ」、SSRIの「ルボックス」の投入に成功したことなどが要因との分析を示した。
「マヴィレット」に関して、フェリシアーノ社長は、「C型肝炎薬市場が急速に縮小する中で、今年4月の発売からわずか4か月で80%以上の市場シェアを獲得し、国内医療用医薬品市場での売上高ナンバーワンとなった」と述べるとともに、現在小児での適応拡大を目指していることを説明。「マーケットリーダーとして究極の目標であるC型肝炎撲滅を目指す」との見解を表明した。
51件の臨床試験を実施中、うち約80%は国際共同試験
同社開発本部 クリニカルオペレーションズ部 統括部長の西庄功一氏は、アメリカ以外で最大の開発拠点(人員250人)を有する日本での開発方針として、(1)グローバルとの同時開発、(2)日本のアンメットニーズに基づく開発、(3)アンメットニーズの高い希少疾患での開発、を原則にしていることを紹介。国内で現在同社が行っている臨床試験は51件で、このうち国際共同試験は80%を占めていることを明らかにした。
また、「ヒュミラ」における、腸管型ベーチェット病、膿疱性乾癬のような日本のみの適応取得の一環として、壊疽性膿皮症がフェーズ3にあることを報告。「マヴィレット」での小児適応追加に代表されるアンメットニーズ対応として、「マヴィレット」での小児適応追加や「ヒュミラ」での小児潰瘍性大腸炎、ウパダシチニブでの12歳以上の活動性アトピー性皮膚炎の臨床試験を実施中であるとした(いずれもフェーズ3)。また西庄氏は「(現在適応外である)RSウイルス感染症による重症化の可能性が高い希少疾患の小児の適応拡大も検討している」と明らかにした。
現在新たに進出を予定しているオンコロジー領域では、慢性リンパ性白血病治療薬として海外では上市済みのベネトクラクスなどで国内開発が進行中だが、同社ではこのほかにも抗体-薬物複合体(ADC)について神経膠芽腫、肺がん、大腸がん、乳がん、食道がん、軟部肉腫/骨肉腫といった各種がんでの開発を進めている。この点について西庄氏は「現在世界で公開されているADC開発数は約70件あるが、アッヴィでは11プロジェクトを有し世界ナンバーワン」であると述べた。
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