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東工大 遺伝子発現を光でコントロールする新技術を開発

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2013年10月03日 PM08:31

新技術「ピッコロ(PICCORO)」開発を発表

東京工業大学は9月26日、同大のバイオ研究基盤支援総合センター兼地球生命研究所の増田真二准教授、生命理工学研究科の田中幹子准教授らの研究チームが、生物における遺伝子発現を光で自在にコントロールすることができる新技術を開発したと発表した。

この技術は「ピッコロ(PICCORO)」と名付けられ、9月24日付の米化学会誌「ACS Chemical Biology」オンライン版に掲載、発表されている。

発表によると、研究チームは、このピッコロ法により、ゼブラフィッシュの尻尾の形成を光のON/OFFにより、時空間制御することに成功したという。

(画像はプレスリリースより)

応用範囲広く注目、とくに神経発生や代謝調節などに関わる遺伝子解析が容易に

増田准教授らは、シアノバクテリアと呼ばれる光合成細菌から青色光受容体タンパク質「PixD」を発見、その機能解析を進めてきていた。PixDは、別のタンパク質「PixE」と暗所で結合し、光をあてると離れる性質があり、それによって光シグナルを下流へ伝えることが分かった。

具体的には、PixDが光の色と強さを認識して、光シグナルをPixEに伝達、最終的にシアノバクテリアが光の方向へ移動する生理現象をコントロールしていることを発見したという。この発見から、光受容体PixDの性質を利用することで、光を用いて任意の転写因子の機能を制御できるのではないかと考えたのだそうだ。

研究チームはまず、PixDが結合するPixEの最小領域を決定、ゼブラフィッシュの尻尾の形成を制御する転写因子に融合させた。すると、その組換え転写因子が、試験管内で光依存的にPixDと相互作用するようになったことが確認された。通常、転写因子は集合体を形成して機能するため、PixDが転写因子に結合すると、その形成が阻害され、結果的に転写調節機能は失われる。

この現象を実際の生体内で確認するため、増田准教授らは、光受容体PixDを発現するゼブラフィッシュを作成、光によって転写因子機能を調節できるかどうか実験した。そして、尻尾の形成が光の有無で変化することを確認し、この技術をピッコロ(PICCORO:PixD complex-dependent control)と名付けたという。

このピッコロ法は、原理的にいかなる転写因子にも応用可能といい、今後さまざまな生命科学研究において用いられることが期待されている。タンパク質の相互作用により遺伝子発現誘導のスイッチングが可能な技術であるため、現在の薬剤や熱処理に依存した方法とは異なり、個体発生のいかなる段階でも遺伝子発現をON/OFFすることができるほか、一度ONにした遺伝子発現をOFFにしたり、局所的に発現を誘導したりすることも容易になるという。

よって、これまで解析が困難とされてきた神経発生や代謝調節などに関わる遺伝子解析が飛躍的に進むと期待されている。新薬や治療法の開発、未知の病態解明を目的としたさまざまな研究の進展にも寄与する新技術であり、注目されるものといえるだろう。(紫音 裕)

▼外部リンク

東京工業大学 発表資料(プレスリリース)
http://www.titech.ac.jp/news/2013/023085.html

ACS Chemical Biology 該当研究発表
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/cb400174d

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