医師の技量によって発見率が変わる大腸内視鏡検査
昭和大学と名古屋大学は8月2日、人工知能(AI)による大腸内視鏡検査支援システムを開発したと発表した。この研究は、昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英センター長、昭和大学横浜市北部病院消化器センターの三澤将史講師、名古屋大学大学院情報学研究科の森健策教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Gastroenterology」に掲載されている。
画像はリリースより
大腸内視鏡検査は大腸がんによる死亡を53%低減させる効果があるといわれている。これは、内視鏡検査中にポリープ(前癌病変)や微小がんを切除することで、進行がんになる前に治療できるからと考えられている。しかし、1回の検査で約26%の微小ポリープが見逃されていること、医師の技量によって発見率・見逃し率が変わることも知られており、近年では、ポリープの見逃しを防ぐ手法がさかんに研究されている。このような背景のもと、研究グループは、AIで見逃しを防ぐことができると考え、AI診療支援システムを共同開発してきた。
2019年度に薬機法申請を目指した試験を開始予定
研究グループは、昭和大学横浜市北部病院で撮影された73件の大腸内視鏡検査(オリンパス株式会社製・CH-HQ290ZIを使用)の動画997分・約1800万フレームを対象とした研究を行った。十分な経験を積んだ内視鏡専門医がこれらの膨大な動画について1フレームごとにポリープが映っている・いないの判定をした。このうちAIの学習に適していると判断された約20万フレームの動画を、ディープラーニングの一種である3次元畳み込みニューラルネットワークで学習。この学習したAIで、AIが学習していない50病変の動画で性能テストをしたところ、94%(47病変)が検出可能だったという。このテストに用いた病変の68%(34病変)が、従来のAIでは検出が難しいと考えられていた平坦なポリープだった。
このAIは、名古屋大学大学院情報学研究科とサイバネットシステム株式会社によって、リアルタイム動作可能なソフトウェアとして実装されている。このソフトウェアは内視鏡検査中に病変を検知すると、内視鏡画面の隅の色を変化させたり、音を発したりすることで医師に注意を喚起する。現在は、学習画像を大幅に増加し、約280万フレームを学習したシステムで、すでに臨床研究を開始している。
このようなAIは、診療に影響を与える可能性があるため、薬機法の承認取得が必要であると考えられている。昭和大学らは2019年度には薬機法申請を目指した試験を開始する予定としている。
▼関連リンク
・大学プレスセンター プレスリリース