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GISTを高い精度で識別できる新たな機械学習モデルを開発-東京理科大ほか

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2021年02月03日 AM11:15

EUS-FNA、免疫組織化学法による診断上の課題克服へ

東京理科大学は2月2日、近赤外光を利用したハイパースペクトル画像から消化管間質腫瘍()を識別する方法を開発したと発表した。これは、同大生命医科学研究所の髙松利寛助教(・国立がん研究センタークロスアポイントメント)、基礎工学部材料工学科の曽我公平教授、理工学部機械工学科の竹村裕教授と、国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科の佐藤大幹氏、池松弘朗医長、故金子和弘氏、同病院遺伝子診療部(当時病理・臨床検査科長)の桑田健部門長、理化学研究所光量子工学研究センターの横田秀夫チームリーダーらの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンラインで掲載されている。


画像はリリースより

GISTは、消化管壁の粘膜下に生じる腫瘍で、胃と小腸によく発生する。痛みや消化管出血、腸閉塞などの初期症状がある場合もあるが、多くは無症状で、内視鏡検査などの消化管の検査で発見される。胃GISTの場合、まず内視鏡検査で粘膜下腫瘍(SMT)として検出される。SMTは粘膜下にあるため、直接観察のみからGISTかどうか診断することはできない。病変の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査(生体組織診断)を実施しても、多くの病変は粘膜深部に位置するため、正しく診断される確率は低いという問題がある。

超音波で病変の位置を確認しながら針を刺して組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)」は有効な生検方法だが、技術の習得が必要とされる。さらに、確定診断のためには、得られた組織サンプルのどこに抗原物質が発現しているかを、抗原抗体反応を利用して調べる「免疫組織化学法」を行う必要があり、これは非常に時間と手間がかかる。

ハイパースペクトルイメージングによるGIST診断技術を検討

粘膜下の深部にあるSMTの診断に有望な技術として、近赤外光を利用したハイパースペクトル画像がある。近赤外光はおよそ波長800nmから2,500nmの光で、紫外光や可視光よりも生体組織内における散乱が少なく、中赤外光よりもはるかに水中で吸収されにくいことから、生体試料の中を透過しやすく、生体イメージングに適している。透過性が高いことは、生体組織を破壊したり傷つけたりすることなく検査できることも意味する。さらに、生体分子の励起に必要な近赤外光強度は、中赤外光および可視光の100分の1であり、近赤外光を利用したイメージングは安全性が高く、生体内での直接観察が可能になる。

ハイパースペクトルイメージング(HSI)は、蛍光プローブを使用せずに高解像度の分光スペクトル情報を得ることができる撮影装置だ。上皮性腫瘍や胃がんの診断など、さまざまな研究領域で応用されている。機械学習アルゴリズムを使用したHSIでは、画像データの各ピクセルの分光スペクトル情報を取得するだけでなく、大量のハイパースペクトル画像から重要なデータを抽出することもできる。しかし、GISTのように組織の深部に生じる病変の識別技術はまだあまり進歩しておらず、事例すらなかった。そこで研究グループは、近赤外光を利用したHSIからGISTを診断する技術を考案し、組織の深部に生じる病変の識別技術としてふさわしいかどうか検証した。

開発した機械学習アルゴリズム、特異度73.0%、感度91.3%、正解率86.1%

41歳から81歳のGIST患者12人(男性10人、女性2人)から切除した病変を対象に研究を行った。患者の年齢の中央値は68歳、腫瘍サイズの中央値は41mm。切除された12の試料のうち、7個は病変が完全に粘膜によって覆われており、3個は部分的に粘膜に覆われていた。また、7個の試料ではGIST病変だけでなく正常部位も含まれていた。

採取した試料に粘膜側から近赤外光を照射し、HSI画像を取得。試料は全て事前に正常部位と病変部位が識別されており、それぞれの部位から得られた画像を機械学習の訓練データとして用いた。この機械学習モデルの識別能力を評価するために、一個抜き交差検証を実施した。一個抜き交差検証は、まず訓練データの中から評価データとなる試料を選び、選んだデータを除いた訓練データで学習して最後に評価データを識別できるか評価する。

その結果、近赤外光を利用したHSI画像に基づく機械学習で予測されたGIST領域は、事前に病理学者が識別した領域とよく一致した。機械学習アルゴリズムの評価指標は、特異度73.0%、感度91.3%、正解率86.1%と高い値を示した。これは、今回用いた方法でGISTと正常組織の違いを識別できることを示唆する結果だった。

研究成果を診断機器として製品化可能な企業を募集中

研究グループは、この技術の臨床応用を見据え、ハイパースペクトル画像を形成する波長を選定する特許をすでに共同出願し、体内で近赤外ハイパースペクトル画像が撮影可能な装置を開発している。

「今後さらなる研究の発展により、粘膜深部に浸潤した腫瘍の範囲診断や腹腔鏡による腫瘍の識別が可能になり、早期発見、手術時の正確な範囲診断により切除部位を最小化することで、機能を損なわないように手術できるようになり、術後のQOLの向上につながると期待される。また、この研究成果を診断機器として製品化し、GISTの早期診断を通じて社会に貢献いただける企業を募集している」と、研究グループは述べている。

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