無散瞳で眼球の血管を含む構造の広範囲・詳細な観察が可能
奈良先端科学技術大学院大学は12月25日、近赤外光を光源とする撮影時の可視光域の照明光を必要としない、「まぶしくない」眼底カメラ(医療現場で検証使用できる実用機)の開発に成功したと発表した。これは、同大先端科学技術研究科物質創成科学領域光機能素子科学研究室の太田淳教授と株式会社ナノルクスによるもの。なお、この実用機を用いた検証が大阪大学医学部附属病院で開始されている。
画像はリリースより
通常の眼底カメラは、可視光のフラッシュを用いて眼底を撮影するためとてもまぶしく、無散瞳では1回目の撮影で縮瞳するのでそれ以降の繰り返し撮影が困難であることや小児での撮影が困難であるなどの制限があった。
暗闇でもカラー撮影を可能にする「近赤外線カラー暗視技術」の開発・設計・製造を行うナノルクス社は今回、同社の近赤外線カラー眼底カメラ「NLX-FD001」に、近赤外線照明と一体化した円筒レンズを組み合わせることで、小型化と高操作性を実現した。近赤外光のみで、フラッシュ光を用いないため、従来の眼底カメラよりもさらに低侵襲で、安全性が高まり、無散瞳で眼球の血管を含む構造の広範囲・詳細な観察を行うことができるよう設計されている。さらに、眼底映像を簡易に患者の負担を小さく撮影できるようにすることで、眼底撮影がより容易になり、眼疾患のみならず、高血圧などの生活習慣病の早期発見にも寄与することが期待される。
医師の使用感等を確認することを目的に検証開始
ナノルクス社と共同研究を行う大阪大学大学院医学系研究科眼科学および同大医学部附属病院AI医療センターは、同実用機を用いて同病院での検証を開始した。近赤外光眼底カメラを用いて正常者および実患者において主要な解剖学的部位と異常所見の撮影を行い、医師の使用感等を確認することを目的としている。近赤外光眼底カメラにより低侵襲に検査することができれば極めて臨床的意義が高いものといえる。これまで10件を超える病院現場での撮影を行い、実用動作の上で支障ないことが確認されている。検証は2021年3月まで継続される予定だ。
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・奈良先端科学技術大学院大学 プレスリリース