コーヒーが眼に与える影響は、ほとんど研究されていなかった
京都大学は11月9日、長浜スタディに参加した9,850人の日本人データを解析した結果、コーヒーをよく飲んでいる人ほど眼圧が低いことを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学の三宅正裕特定助教、辻川明孝同教授、中野絵梨同博士課程学生を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、「Ophthalmology Glaucoma」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
近年の研究で、習慣的なコーヒー摂取が健康に良い影響を与える場合が多いことがわかってきている。実際に、コーヒーをよく飲んでいる人の方が糖尿病、心血管疾患、肝硬変、いくつかのがんや認知症になりにくく、死亡率も低いという結果が出ている。「New England Journal of Medicine」に掲載された最近の記事では、1日3~5杯のコーヒーを習慣的に飲むのがよいのではないかと報告されている。一方、コーヒーと眼の関係についての研究はあまりなく、コーヒーが眼に良いのか否かの結論は出ていない。
現在、日本人の40歳以上の20人に1人が緑内障と言われ、日本人の視覚障害の原因第1位にもなっている。コーヒー摂取と緑内障の関係を調べた報告はいくつかあるが、眼圧との関係を大規模なコホートで調べた研究は、今までほとんどなかった。そこで研究グループは、緑内障発症・進行の危険因子である「眼圧」とコーヒーの関係に着目して解析を行った。
緑内障でない人では「習慣的なコーヒー摂取頻度が高いほど眼圧が低い」と判明
研究グループは、京都大学附属ゲノム医学センターが滋賀県長浜市と共同で実施する「ながはま0次予防コホート事業」(長浜スタディ)の9,850人のデータを用いて、習慣的なコーヒー摂取量と眼圧との関係を調べた。コーヒー摂取量については問診で聴取し、「1日1杯未満」「1日1杯」「1日2杯」「1日3杯以上」の4群に分類した。
コーヒー摂取頻度と眼圧の関連解析を行ったところ、緑内障と指摘されたことがない人では、眼圧に関わるさまざまな因子(年齢、性別、角膜厚など)で補正しても、習慣的なコーヒー摂取頻度が高いほど眼圧が低いことが確認された。具体的には、1日3杯以上飲む人は1日1杯未満の人に比べ、眼圧が約0.4mmHg低いという結果だった。今回の研究の参加者全体の平均眼圧が14.7mmHgだったので、約3%に相当する。一方、緑内障と指摘されたことがある人とない人とで比べた場合では、コーヒー摂取頻度に明らかな差は見られなかったという。習慣的なコーヒー摂取と眼圧との関係を大規模な日本人コホートで調べた研究は今までなく、世界的にもほとんどない。今後、臨床的および実験的な裏付けが強く期待される。
コーヒーを飲むことで眼圧が下がるのかは不明、今後の研究に期待
今回の結果を受け、研究グループは以下のようにコメントしている。「今回、コーヒーをよく飲む人ほど眼圧が低いことを示したが、コーヒーを飲むことで眼圧が下がるのかを検証したものではない。また、緑内障と指摘されたことのない人に限って眼圧とコーヒーの関係を調べたものである。その理由として、緑内障の人はすでに緑内障治療で眼圧を下げる目薬を使用しており、眼圧に対するコーヒーの純粋な影響が判断しづらいという点があげられる。そのため、すでに緑内障になっている場合でも、コーヒーが眼圧を下げるかについては不明だ。加えて、緑内障と指摘されたことがある人とない人で比べた場合でもコーヒー摂取頻度に明らかな差が見られなかったため、コーヒー摂取と緑内障の関連も不明確である」
今回の研究成果により、習慣的なコーヒー摂取頻度が高いほど眼圧が低いことが示されたが、緑内障の予防・治療目的でコーヒーを摂取することを推奨するものではなく、今後のさらなる研究が望まれる。
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・京都大学 研究成果