C9orf72変異細胞で異常伸長リピートRNAが蓄積
大阪大学は8月27日、前頭側頭葉変性症(FTLD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった難病を引き起こす「C9orf72」(chromosome 9 open reading frame 72)遺伝子のリピート延長変異をもつ患者の細胞で、異常に伸長したリピートRNAがRNAエクソソームにより分解されていることを明らかにしたと発表した。これは、同大大学院医学系研究科精神医学の森康治助教、河邉有哉氏(当時博士課程)、池田学教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The EMBO Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
遺伝子において同じ塩基配列が繰り返して続くものをリピート配列と呼ぶ。異常に伸長したリピートRNA配列は、スプライシング異常を誘導し、細胞核内で毒性を帯びたRNA凝集体を形成して、しばしば病気の原因となる。今回注目したC9orf72の異常伸長リピート配列は、FTLDとALSを引き起こす。患者由来のC9orf72変異細胞では、異常伸長リピートRNAが蓄積していることがわかっていたが、細胞内で異常伸長リピートRNAがどのように分解されるかはわかっていなかった。
異常伸長リピートRNAから産生されるDRPが、RNAエクソソームの活性阻害
今回、研究グループは、疾患モデル細胞を用いて、C9orf72遺伝子の非タンパク質翻訳領域に由来する異常伸長リピートRNAがRNAエクソソームにより分解されていることを明らかにした。患者由来のC9orf72変異細胞で、RNAエクソソームの発現を低下させると、多数のリピートRNA凝集体が確認されたという。
さらに、「ジペプチド・リピート・タンパク質」(DPR)が、RNAエクソソームの活性を阻害して異常伸長リピートRNAの分解を抑制し、その結果、より多くの異常伸長リピートRNAが細胞内に蓄積することもわかった。DPRは、異常伸長リピートRNAやリピートRNAから、開始コドン非依存性の翻訳(RAN翻訳)を受けて生じ、本遺伝子変異によるFTLDおよびALSの病態に強く関与していると考えられている。
RNAエクソソームの異常は、橋小脳低形成と呼ばれる、まれな新生児期の神経系疾患を引き起こすことがすでに知られており、RNA分解系の異常は神経の発達や生存に重要な役割を果たしていると考えられる。「研究成果がC9orf72リピート伸長変異に関連するFTLDおよびALSの病態解明に寄与するところは大きく、シークエンス技術の発展により近年続々と発見されている他のリピート配列関連疾患の病態解明への応用も期待される」と、研究グループは述べている。
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