SOD1-ALSの治療薬候補のアンチセンス・オリゴヌクレオチド
米バイオジェンは7月8日、スーパーオキサイドジスムターゼ1遺伝子異常を伴う筋萎縮性側索硬化症(SOD1-ALS)の治療薬候補トフェルセンのP1/2相試験の結果を発表した。成果は「The New England Journal of Medicine」に掲載されている。
トフェルセンは、SOD1-ALSの治療薬候補として評価されているアンチセンス・オリゴヌクレオチド。SOD1メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に結合し、リボヌクレアーゼH(RNase-H)による分解を起こし、SOD1タンパク質の産生を減少させる。同社は、開発提携およびライセンス契約により、トフェルセンをIONIS Pharmaceuticals(アイオニス・ファーマシューティカルズ)社から導入した。
トフェルセン100mg投与群でCSFのSOD1濃度低下
今回結果が発表されたのは、SOD1-ALS患者を対象の無作為化・プラセボ対照・単回および反復投与用量漸増試験。反復漸増(MAD)投与群は、4つの用量(20、40、60、100 mg)のトフェルセン、またはプラセボを12週にわたり投与された。主要評価項目は、安全性、薬物動態および薬力学、副次的評価項目は、CSF中のSOD1タンパク質の濃度のベースラインからの変化量であった。加えて、探索的有効性エンドポイントの評価も行われた。
その結果、安全性に関して、1回以上の用量のトフェルセンの投与を受けた患者(n=38)で最も多く報告された有害事象は、頭痛、処置痛、腰椎穿刺後症候群、転倒であった。トフェルセン群5人、プラセボ群2人に重篤な有害事象があり、試験中にプラセボ群でALSに続発する呼吸不全による死亡1例、フォローアップ期間中にトフェルセンの治療群で肺塞栓症および呼吸不全による死亡2例(それぞれの用量は20mgおよび60mg群)が発生した。また、CSF中のSOD1タンパク質の濃度のベースラインからの変化量は、トフェルセン100mgによる治療を3か月間にわたり受けた患者(n=10)は、SOD1濃度の36%減少を示したのに対し、プラセボ群(n=12)では3%の減少であった。
さらに、探索的指標において、プラセボ群と比較して、ALS機能評価スケール改訂版 (ALSFRS-R)、および肺活量およびハンドヘルドダイナモメーター(HHD)で計測した筋力の低下を抑制する数値的な傾向が認められた。85日時点までのALSFRS-Rのベースラインからの平均的変化量は、48ポイントのスケールでトフェルセン100mgの治療群は-1.19、これに対してプラセボ群は-5.63だった。探索的臨床評価指標全体におけるプラセボ群との違いは、主に急速進行性のサブグループによるものあった。
SOD1-ALSの成人患者を対象としたVALOR試験を継続中
同社のALS治療薬開発においては、EMPOWER試験(P3試験)の結果が思わしくなかったことから、2013年にdexpramipexoleの開発プログラムを中止した過去がある。今回は、EMPOWER試験からの重要な学びを、家族性および他のタイプのALS治療薬候補の幅広いポートフォリオに応用している。
なお、VALOR試験(P3)が現在継続されており、SOD1-ALSの成人患者を対象にトフェルセンの有効性と安全性について、プラセボと比較して評価される予定だ。
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・バイオジェン プレスリリース