意見書では、藤田医大が公表したアビガン観察研究の中間報告において、致死率が11.6%に達したことを指摘。厚生労働省の新型コロナウイルス診療の手引きの全国集計による致死率1.6%や中国CDCが公表している致死率2.3%と比べて明らかに高いとし、「このことはアビガンが有効でない可能性、さらに有害な可能性を示すもの」との見解を示した。
また、アビガンの観察研究について、「臨床研究法の適用を受けないと言って良いか疑問」と提起。同大による観察研究が、新型コロナウイルス感染症に対する「薬剤の効果推定」を研究目的としていることから「臨床研究法の適用を受ける臨床研究であることは明らか」と指摘した。
そのため、「観察研究には該当せず、本来、特定臨床研究として、研究参加者保護のための十分な説明や有害事象を責任持って管理する体制のもとで行われるべき」と主張した。
その上で、同大による観察研究について「アビガン投与者の致死率が明らかに高く、危険性が危惧されるうえ、研究参加者保護のための十分な説明や有害事象への対応について、同大で責任持って管理する対応が取られていない点が倫理的にも重大な問題」と指摘。
アビガンを観察研究の枠組みで使用し続けることは、かえって患者の利益を損ねる結果になるとし、新たな患者登録をいったん中止すべきと訴えた。
さらに、アビガンについて、既に明らかとなっている催奇形性などの重大な副作用のみならず、軽症者の死亡リスクも懸念されるとし、「危険性も精査した上でアビガンの有効性を検証すべき」と強調。
「有効性と安全性が科学的に証明されていない薬剤を前のめりに承認して、副作用死を出すことがあってはならない」と警鐘を鳴らし、「厳密なランダム化比較試験の結果で有効性を証明することなしに、新型コロナウイルス感染症治療薬としてアビガンを承認すべきではない」とした。