既存のオートファジー活性化剤は分解ターゲットが選択できない
東北大学は10月11日、オートファジーの創薬応用を容易にする分子AUTAC(オータック)を発明したと発表した。この研究は、同大学大学院生命科学研究科の有本博一教授、高橋大輝研究員らによるもの。研究成果は、米国の主要科学誌「Molecular Cell」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
オートファジーは、機能不全に陥った細胞小器官、細胞外から侵入する病原体、タンパク質凝集体など多様な相手を分解できる。2016年に大隅良典教授がノーベル賞を授与されたことで知られているように、日本が強みを持つ研究領域で、創薬応用にも期待が高まっている。しかしながら、既存のオートファジー活性化剤は、分解する相手を選ぶ能力を持たない短所があった。
疾患原因を選択的かつ直接的に分解、特に製薬企業での活用が見込まれる
今回の研究では、オートファジー機構を利用して、細胞内の疾患標的を分解することを目指した。まず、「オートファジーを呼び寄せる働き」を持つ化学構造(グアニン誘導体)を発見。続いて、疾患に関係する相手に結合する「標的化リガンド」を用意し、両者を結合してAUTACを作った。今回の発表論文ではAUTAC1~AUTAC4まで4つの化合物を示した。例えば、AUTAC2は、細胞内のFKBP12タンパク質の量を約70%減少させることが判明し、AUTAC4はミトコンドリア表面に結合するように設計された。
ミトコンドリアは、エネルギー通貨であるATPを合成するほか、細胞の生死を決定づける機能も持っている。疾患や老化によって機能低下が進むとミトコンドリアは小さく断片化することが知られていた。そこで、疾患患者から樹立された線維芽細胞株Detroit532にAUTAC4を3日間投与したところ、ミトコンドリア機能(膜電位、ATP産生)が顕著に改善。また、AUTAC4投与前に存在していた断片化ミトコンドリアは除去され、ネットワーク状の健康な形態に復帰することも確認できたという。
今回発明したAUTACは、多彩な分解対象を選んで除去できる点で、世界初のオートファジー活性化剤。オートファジーは多様な物質の分解に応用できるため、製薬会社において、それぞれの疾患に合わせたAUTAC分子が研究されていくと期待される。なお、この技術は東北大学より国際特許出願がなされている。
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・東北大学 プレスリリース