砂糖の取り過ぎによる脂質代謝異常のメカニズムを研究
名古屋大学は9月12日、砂糖(ショ糖)の取り過ぎによって起こる脂質代謝異常(脂肪肝、高中性脂肪血症)は、肝臓の脂質代謝の概日リズムが乱されることにより、中性脂肪を蓄積しやすくなるというメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「J. Biol.Chem.」に掲載されている。
画像はリリースより
メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性を基盤とする生活習慣病の前段階の未病状態であり、生活習慣の改善により元に戻ることができると考えられている。これまで、メタボリックシンドロームの原因は、エネルギーの過剰摂取や動物性油脂の過剰摂取などが主な要因であると考えられてきたが、最近になって、砂糖(ショ糖)や異性化糖などの果糖を多く含む糖の取り過ぎが主要な原因の一つであることがわかってきた。実際には、食品に元から含まれている糖ではなく、後から添加する糖(加糖)の過剰摂取が問題と考えられている。そのため、2015年にWHOは、1日の砂糖の摂取を摂取エネルギーの5%未満、小さじ6杯分の砂糖(約24g)相当にするよう指針を出している。
脂質合成のリズムの振幅が砂糖の取り過ぎにより増大
研究グループは、時間栄養学的研究によって摂食時間を日中の活動時間帯だけに制限することにより、砂糖の過剰摂取による脂質代謝異常(脂肪肝、高脂血症)が改善されることを既に報告している。今回は、ラットを用いて、砂糖の取り過ぎによる脂質代謝異常のメカニズムを調べた。その結果、肝臓の脂質代謝は日周リズムを示すが、その脂質合成のリズムの振幅が砂糖の取り過ぎにより増大し、脂質合成が促進することが原因であると突き止めた。また、この作用は、ショ糖を構成する果糖によることも明らかにした。さらに、ショ糖を構成する果糖とブドウ糖は、わずかな構造上の違いがあるだけにもかかわらず、代謝におよぼす影響が大きく異なり、それに体内時計が関係することもわかった。
「今回の研究成果は、生化学系の教科書にある記載の修正につながり、また、砂糖の取り過ぎによるメタボリックシンドロームの予防への手がかりになるものと期待される」と、研究グループは述べている。
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