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MSモデルマウスの宇宙飼育ミッション終了、炎症性疾患に対する重力の影響を検証-北大

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2019年07月10日 PM12:45

宇宙実験により、「重力ゲートウェイ反射」の仕組みを検証

北海道大学は7月8日、中枢神経系病気モデルマウスの宇宙飼育ミッションが終了したと発表した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で行ったもの。

中枢神経系である脳や脊髄の血管は、細胞、生体高分子や病原体の出入りを、血液脳関門という特殊な構造で制限している。しかし、中枢神経系にも細菌やウイルスが感染したり、がん転移が生じたり、免疫細胞が侵入して多発性硬化症などの難病を発症したりすることもある。このような背景から、病原体や免疫細胞などが中枢神経系に入りやすいゲートがある可能性が考えられてきた。しかし、ゲートの場所や形成される過程など、その実態は明らかにされていなかった。

研究グループは、これまでに多発性硬化症(MS)の動物モデル(実験的自己免疫性脳脊髄炎、EAE)で、ふくらはぎの筋肉にかかる重力の刺激で神経が活性化し、結果的に腰髄の血管に免疫細胞が集まり炎症反応が起こる「重力ゲートウェイ反射」と、その引き金となる「炎症回路」を同定してきた。しかしこれまでに、重力が炎症状態に与える影響について調べた研究はほとんどなかった。

引き続き、EAEと網膜炎症の炎症病態に重力がどのように作用するのかについて検証

地上の重力実験では、マウスの尾部懸垂実験によって、後ろ足を接地しないようにしてヒラメ筋からの重力刺激を開放し、重力ゲートウェイ反射を証明。しかし、尾部が垂れてしまうことでマウスの前肢により重力負荷がかかり、前肢部分に重力ゲートウェイ反射が誘導され、結果としてゲートは頸髄に移動した。このように、地球上では姿勢によって体のどこかに重力がかかるため、重力ゲートウェイ反射が無くなった場合に、どのような生理的、病理的な効果が認められるかは不明だった。

そこで研究グループは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究で、EAEと網膜炎症を起こした炎症性疾患マウスを、世界で初めてISS・「きぼう」日本実験棟において、32日間にわたり微小重力下で飼育した。

6月5日に米国内にてアメリカ航空宇宙局(NASA)からJAXAに対し、帰還したマウスの飼育装置が引き渡され、全てのマウスの生存を確認した。今後、EAEと網膜炎症の炎症病態に重力がどのように作用するのかを検証。具体的には「約1か月間の微小重力により、第5腰椎の背側血管ゲートがどのように変化するのか」「網膜炎症もEAEと同様のメカニズムで起こるのか」について、詳細に解析する予定だという。

研究グループは、「今回の宇宙実験は、重力が炎症性病態にどのような影響を及ぼすのかを検証する世界で初めての研究となる。炎症応答に対する重力の重要性が証明されれば、さまざまな病気(中枢神経系疾患など)に関連する炎症をコントロールする方法(神経刺激で炎症を制御する方法など)を開発できるようになる」と、述べている。

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