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アルツハイマー病発症に関わる日本人特有の遺伝子変異を同定-長寿研

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2019年06月24日 PM12:15

孤発性アルツハイマー病の大規模ゲノム解析を実施

国立長寿医療研究センターは6月20日、孤発性アルツハイマー病(LOAD)患者の網羅的なゲノム解析を行い、発症リスクを高める日本人特有の遺伝子変異を発見したと発表した。この研究は、同センターメディカルゲノムセンターの尾崎浩一臨床ゲノム解析推進部長、浅海裕也特別研究員らが、新潟大学 脳研究所 遺伝子機能解析学分野、 生命医科学研究センター 循環器疾患研究チームと共同で行ったもの。研究成果は、米オンライン科学雑誌「Molecular Medicine」に同日付で掲載された。


画像はリリースより

LOADは認知症の半数以上を占め、多数の環境的、遺伝的要因の複雑な相互作用により発症するが、遺伝的因子の発症に与える寄与度は大きく60~80%であることが知られている。しかし、この疾患の遺伝的要因の大部分は、いまだ明らかにされていない。欧米における白人患者の大規模なゲノム解析研究により、発症リスクとしてTREM2遺伝子変異が報告されたが、日本ではその保有者がほとんど見つかっていない。その一方で、同様のリスクとなる遺伝子変異は日本人にも存在すると考えられている。

SHARPIN遺伝子上に日本人特異的なミスセンス変異を発見

研究グループは、日本人のLOADリスク遺伝子の探索を目的に、まず国立長寿医療研究センターのバイオバンクに保管された日本人患者由来ゲノムDNAのエクソームシークエンス解析を実施。今回の研究では、最もよく知られたLOADリスク因子であるAPOE ε4を持たない202例の患者ゲノムDNAを解析した。この解析で見つかった約50万種の遺伝子多型について、その有害性などさまざまな指標に基づき段階的なフィルタリングを実施。その結果、7種の遺伝子多型がリスク候補となることを見出した。次に、この7種の遺伝子多型について、大規模な日本人コホートを用いて症例-対照関連解析を実施。ここでは、新潟大学および理化学研究所におけるサンプルをさらに加え、LOAD患者4,563例、対照検体1万6,459例を用いた。解析の結果、最終的に、SHARPIN遺伝子上に日本人特異的に存在するミスセンス変異rs572750141(NM_030974.3:p.Gly186Arg)が、統計学的に有意なLOADリスク因子であることを発見した(オッズ比 = 6.1)。

さらに、この遺伝子変異がどのようにLOADと関連するかを明らかにするため、変異型SHARPINタンパク質(G186R)の機能解析を実施。SHARPINは、免疫応答や炎症反応において中心的な役割を果たすNF-κBの活性化に重要。そこで、ヒト胎児腎由来のHEK293細胞に変異型SHARPINを導入し発現させたところ、正常型のSHARPINを導入した場合に比べてNF-κBの活性が低下した。また、正常型SHARPINは細胞質に均一に存在するのに対し、変異型SHARPINは細胞内で不均一なサイズの塊を作って存在することが観察された。これらのことから、変異型SHARPINは細胞内での形状や局在が大きく変わることで、NF-κBを活性化する機能が低下して発症に関わる可能性があると研究グループは考察している。

今回の研究で見出されたLOADの新規リスク因子は、東アジア人(特に日本人)に特有な遺伝子多型であるため、日本人にとって同疾患のクリニカルシークエンス等、将来期待されるゲノム医療において重要な知見となる。今回得られた網羅的な解析情報は、(AMED)のAMEDゲノム制限共有データベース(AGD)および臨床ゲノム情報統合データベース(MGeND)に登録し、共有されることにより他の研究にも役立てられると、研究グループは述べている。

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