母親だけでなく、父親も陥る可能性のあるボンディング障害
東北大学は4月16日、父親の赤ちゃんに対するボンディング障害のリスク因子を報告し、父親にも産後のメンタルヘルスケアが重要であることを明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の西郡秀和非常勤講師、同大東北メディカル・メガバンク機構の小原拓准教授、同大大学院医学系研究科婦人科学分野の八重樫伸生教授らによるもの。研究成果は、「The Journal of Maternal-Fetal & Neonatal Medicine」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
ボンディング障害とは、出生後の赤ちゃんに対して、愛おしく思い、親として守ってあげたいといった、親が子どもに抱く感情を持てない状態のこと。放置すると育児放棄や幼児虐待に繋がりかねないため、産後のメンタルケアにおいて重要な課題となっている。日本においては近年、母親の産後のメンタルヘルスが注目されているものの、父親のメンタルヘルスについての研究は多くなかった。しかし、母親のみならず、父親もボンディング障害に陥る可能性がある。
母親のボンディング障害、妊婦へのDV、父親の産後うつがリスク因子に
研究グループは、父親の赤ちゃんに対するボンディング障害と産後うつの頻度、それらのリスク因子を、前向き調査で検討した。
まず、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の追加調査として、産後1か月の父親を対象に調査を実施。ボンディング障害の評価として、赤ちゃんへの気持ち質問票を用いた。この質問票は、子どもへ抱く気持ちについて調査する質問票で、得点が高いほど子どもへの否定的な感情が強いことをあらわす。なお、同調査ではボンディング障害の程度が高い上位約10%が含まれる点数を閾値とした。また、産後うつ評価としては、エジンバラ産後うつ病質問票を用いて、8点以上をうつ状態とした。
産後1か月の父親1,585名を対象に調査を行った結果、1,008名の回答が得られた。赤ちゃんへの気持ち質問票のうち、わが子への情緒的絆の欠如4項目合計4点以上、わが子への怒り・拒絶4項目合計3点以上を陽性とした。陽性の頻度は、情緒的絆の欠如8.3%、怒り・拒絶7.9%、産後うつ11.2%であったという。
この研究によって明らかにされた主なリスク因子は、父親の赤ちゃんへの情緒的絆の欠如の項目については「母親の赤ちゃんへの情緒的絆の欠如」「妊婦への精神的DVがあった」「父親が産後うつだった」という3つだった。また、怒り・拒絶の項目については「母親が赤ちゃんに対して怒り・拒絶を感じる」「妊婦への身体的DVがあった」「父親が産後うつだった」という3つだった。父親と母親の赤ちゃんへの情緒的絆の欠如の項目と怒り・拒絶という項目については、それぞれの点数が緩やかな相関を示したという。
研究グループは、「本研究は、産後1か月における父親のボンディング障害と産後うつの実態、それらのリスク因子を明らかにした。特に、父親のボンディング障害についてのリスク因子が、母親のボンディング障害、妊婦へのDV、産後うつであることを、本研究において国際的に初めて示した。児童虐待予防などの観点からも、産後うつも含めて、母親のみならず父親の産後のメンタルヘルスケアが重要であると考えられる」と、述べている。
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