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【RS知財フォーラム】創薬研究、AIと共同作業に-大データ時代で知財戦略も変化

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2018年02月16日 AM10:30

人工知能(AI)の普及で創薬研究と知的財産のあり方はどう変わるのか――。日本製薬工業協会とバイオインダストリー協会が13日に都内で開催した「」では、将来的に創薬研究の相当部分でAIが用いられ、新薬の基礎研究はAIと研究者の共同作業になるとの見方が示された。知財戦略についても、これまでの物質特許の保護期間に立脚したモデルではなく、経営戦略を理解したより高度な業務にシフトし、製品ごとに独自戦略が必要になるとの意見が出た。

製薬協知的財産委員会の森平浩一郎委員長は、創薬研究におけるAIの普及について、「10年後にはかなりの部分でAIが使われるのではないか」と予想。「標的分子の探索、候補化合物の取得といった物質特許が生まれてくる基礎研究のステージで活用されるのではないか」との見方を示した。

標的分子の探索の場面においては、研究員の知識と最新の科学的知見による着想から、AIを活用したテキストマイニング、オミックス研究がツールに使われてくるとし、「枯渇が懸念されている新規創薬標的分子数が下げ止まると期待している」と期待感を述べた。

候補化合物の取得段階では、特に低分子医薬品ではバーチャルスクリーニングの高精度化により、AIが候補化合物を直接示す可能性が大きいと予測。「複数の候補化合物をAIが提示し、それを研究員が最適化するという共同作業になるのではないか」と述べ、研究員の仕事はより複雑な構造の医薬品などにシフトすると見通した。

こうしたAI時代の知財について、森平氏は「既存薬のドラッグリポジショニングやデバイスに特徴のあるDDSなど、多様化する製品ごとに独自の知財戦略が必要」と指摘。AIの普及で開発期間が短縮することにより、創薬研究への参入障壁が下がり、競争が激化するなどとし、「物質特許の保護期間に立脚した従来モデルでは不足する」とした。

その上で、今後の知財業務に言及。出願明細書の作成などルーチン化した業務やデスクワークはAIが代替するとし、「人間は方針の作成など、より高度な業務へと変わっていく」と予測。ビジネスリスクの理解やAIの普及を見据えた経営戦略の理解と提言など、「マルチな能力が必要」と訴えた。

AI創薬の現状については、京都大学大学院医学系研究科の奥野泰史教授が製薬企業や理化学研究所などが参加したAIコンソーシアムの活動を紹介。約30プロジェクトから新薬の標的探索、リード最適化、臨床試験、市販後安全性まで全ての段階をAI化し、業界共通基盤の作成を目指していることを説明した。

奥野氏は、学習済みのAIモデルについては、全ての企業が使用できるようにするとし、「製薬企業は薬を創る場所で戦うべき。ITの基盤は業界全体で共通とし、創薬の部分で世界に生き残る製薬企業になるべき」との考えを示した。

ただ、AIには学習させるデータが必要となるためAIを使って「新規物質を得るのは難しい」と指摘。AIの機械学習で発生した誤差について、シミュレーションを組み合わせる戦略が重要とし、「AIは重要なツールだが、基になる質の高いデータをいかに産官学で整備していくかが重要」とした。

 

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