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骨芽細胞と破骨細胞の細胞間コミュニケーションの仕組みを解明-阪大

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2018年01月26日 PM02:00

未解明な部分多い骨芽細胞と破骨細胞による骨リモデリング

大阪大学は1月19日、最先端のイメージング技術を用いて、骨芽細胞と破骨細胞を同時に可視化し、直接接触しコミュニケーションをとる瞬間を捉えることに世界で初めて成功したと発表した。この研究は同大大学院医学系研究科の石井優教授(免疫細胞生物学)ら研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」にて公開された。

骨は、破骨細胞と骨芽細胞が互いに協調して働くことにより、構造が緻密に形作られる。これを骨リモデリングと呼ぶ。しかし、加齢や炎症などにより、骨芽細胞と破骨細胞のバランスが崩れると、骨粗しょう症や関節リウマチなどの疾患につながる。

これらの疾患を治療する上で、骨芽細胞と破骨細胞の関係を正しく理解することは重要だが、骨芽細胞と破骨細胞が直接接触をして情報のやりとりをしているのか、あるいは直接接触をせずに情報のやりとりをしているのかなど、骨リモデリングの実体については未解明な部分が多かった。

PTH製剤が骨芽細胞・破骨細胞に与える影響も解析

研究グループは、これまで独自に立ち上げてきた骨組織のライブイメージング系を活用して、生きたまま骨の内部の骨芽細胞と破骨細胞を同時に可視化することに成功。骨芽細胞と破骨細胞はそれぞれ数十細胞単位で小集団を形成し、両者の境界部分のほとんどは、細胞同士の接触が観察されなかったが、一部の領域で骨芽細胞と破骨細胞が直接接触してコミュニケーションをとることが判明したという。この細胞間コミュニケーションの多くは、破骨細胞の突起が神経シナプス様に骨芽細胞に伸びた構造をしており、時間の経過とともに細胞の形態が変化していく様子が観察されたとしている。


画像はリリースより

さらに、骨芽細胞と破骨細胞の細胞間コミュニケーションの生物学的意義を明らかにするために、破骨細胞が出す酸を感知し蛍光がオンとなるpH応答性蛍光プローブを活用してライブイメージングを実施。その結果、骨芽細胞と接触している破骨細胞では、骨芽細胞と接触していない破骨細胞と比較して、骨を溶かす機能が低下していることがわかった。これにより、骨芽細胞と破骨細胞の物理的な接触が骨リモデリングの調節に重要な役割を担っていることが明らかとなったとしている。

最後に、研究のライブイメージング技術を薬効評価系として応用し、検討を行った。研究グループは、骨粗しょう症薬として臨床応用されているものの、その作用機序がよくわかっていない副甲状腺ホルモン(PTH)製剤に注目。生体骨組織内においてPTH製剤が骨芽細胞および破骨細胞に与える影響を解析したところ、PTH製剤を連日投与した群では、薬剤を投与してない群と比較して、骨芽細胞と破骨細胞の細胞間相互作用が有意に増加し、破骨細胞の骨を溶かす機能が抑制されていることが明らかになったという。

現在、さまざまな骨粗しょう症治療薬が開発されているが、これまでの薬剤は破骨細胞を標的とした薬剤が主流だったため、破骨細胞の数を減らしすぎて骨のリモデリングができなくなり、逆に骨が脆くなるという問題点があった。今回の研究成果によって、骨芽細胞と破骨細胞の細胞間コミュニケーションの仕組みが明らかになったことで、「“骨芽細胞と破骨細胞のバランスを調節する”という新たな治療法の開発が期待される」と研究グループは述べている。

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