現在はX線画像や触診で評価
国立循環器病研究センターは8月1日、家族性高コレステロール血症(FH)の診断基準であるアキレス腱の厚さを、超音波で評価可能であることを明らかにしたと発表した。この研究は、国循研究所病態代謝部の小倉正恒室長、斯波真理子部長、株式会社関西超音波サービスとの研究チームによるもの。研究成果は、日本循環器学会の専門誌「Circulation Journal」に掲載された。
画像はリリースより
FHは、LDLコレステロールの異常な増加を来す遺伝病。FHでは、アキレス腱にコレステロールがたまって厚くなる特徴がある。現在のガイドラインでは、アキレス腱の厚さが診断基準の1項目されており、X線画像で最も厚い部分が9㎜以上、あるいは触診で厚い場合にFHと定義されている。
しかし、このアキレス腱の厚さを測るX線撮影装置が一般医院に常備されていないことや、触診での診断が難しいことなどの問題があり、診断率向上のために、アキレス腱の厚さを簡単に測る方法が確立されることが期待されていた。
超音波画像のAT-T、男性6mm以上、女性5.5mm以上でFHの可能性高く
研究グループは、FH患者に対し、超音波を用いてアキレス腱の厚さを測定する方法の確立に取り組んできていた。超音波画像からは、触診の指標である横幅(AT-W)だけでなく、ガイドラインでX線画像指標とされている縦幅(AT-T)、さらには断面積(AT-A)も測ることができることが明らかになった。今回の研究では、触診・レントゲン画像診断・超音波画像診断の結果を総合し、超音波画像から計測したAT-Tについて、男性6mm以上、女性5.5mm以上でFHの可能性が高いとする基準値(カットオフ値)を、日本で初めて設定したとしている。
アキレス腱の厚さはLDLコレステロール高値の状態の蓄積を反映すると考えられるため、FH診断基準だけでなく冠動脈疾患のリスクマーカーにもなる。今回の研究では、アキレス腱の厚さは年齢や性別、高血圧、糖尿病、喫煙など他のリスクと独立して、冠動脈疾患および無症状の動脈硬化指標である頸動脈硬化の重症度に関係することも明らかになったとしている。
超音波画像診断装置は広くさまざまな病院・医院にあり、放射線被ばくの問題もないため、かかりつけ医でアキレス腱の厚さを正確に測定し、FHの診断をすることが容易になり、FHの診断率の向上や早期治療開始も可能になると期待される。研究グループは、「今後は、計測法の標準化が必要になります」と述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース