薬用カプセルなどに応用される人工細胞「リポソーム」
東京農工大学は6月26日、人工的に創られた細胞モデルに骨格を持たせ、現実の細胞並みに硬くすることに成功したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究院先端物理工学部門の柳澤実穂テニュアトラック特任准教授ら、東京工業大学、慶應義塾大学、東北大学の研究グループによるもの。研究成果は、米科学アカデミー紀要「PNAS」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ヒトの体を構成する細胞は、細胞骨格と呼ばれるネットワーク構造により非常に安定している。リポソームは、基礎研究だけでなく、薬用カプセルや化粧品など多くの日用品に応用されてきたが、細胞骨格のような構造が無いため、わずかな刺激により膜が壊れやすく、内包物が漏れやすいという問題があった。リポソームを壊れにくくし、さらにその強度を自在に変化できれば、カプセルとしての機能を大幅に向上できることから、その手法が渇望されていた。
体内で想定される浸透圧変化環境でも崩壊しないことを確認
今回、DNAナノテクノロジーと呼ばれる技術によって人工的な細胞骨格を作製し、リポソームに付与した。DNAナノテクノロジーとは、DNAが二重らせんをとる性質を利用し、ナノサイズの形を自在に創り出す技術。この技術を用い、DNAからなる骨格を持つことで、体内で想定される浸透圧変化環境でも崩壊しないことを確認したという。この補強機能は、DNAが互いにネットワークを組むことに由来し、さらにその強度はDNAの塩基配列により決定される。そのため、DNA構造を設計することによる強度制御が期待されるという。
今回形成した人工細胞骨格は、リポソームの内側に存在するため、外部との接触無しに膜を補強することが可能。これにより、リポソームのカプセルとしての機能強化が見込まれるという。また、DNAで形成されているため、DNAの化学反応に基づく膜崩壊の誘発と内包物の放出制御など多様な機能付与も期待される、と研究グループは述べている。
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・東京農工大学 プレスリリース