医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > インターネット上の医療情報は玉石混交、発信者・利用者ともに意識改革を

インターネット上の医療情報は玉石混交、発信者・利用者ともに意識改革を

読了時間:約 3分13秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年12月21日 PM02:00

患者が本当に知りたい情報、ネットでは見つけにくい

上場企業であるDeNAが運営していた医療・ヘルスケア情報サイト「」(2016年11月29日に全記事非公開)での著作権侵害や信頼性に乏しい情報発信が話題となったなか、医療にかかわるジャーナリストや医療従事者などが参加したメディカルジャーナリズム勉強会(代表:市川衛氏)が17日、「インターネット上の医療健康情報の今後を考える~適切な情報発信のあり方とは~」と題して都内で開催され、患者の立場からはインターネット上に存在する医療情報がまだ不十分であること、SEO専門家からはWELQの閉鎖後も信頼性に欠けるインターネット情報サイトに医療情報を求めるアクセスが集中していることが報告された。


タレント・歌手の麻美ゆまさん

患者の立場からは、境界悪性卵巣腫瘍の罹患経験を持つタレントの麻美ゆまさんが登壇した。麻美さんは3年前、消化器症状をきっかけに大学病院の総合診療科を受診したことで、卵巣境界悪性腫瘍が発覚。当初の診断で腹水があることや子宮内膜症の疑いを指摘され、「とにかく初めて聞いた用語や自分に思い当たる症状でネット検索を行った。どれが正しいかを疑う以前に『ネットに書いてあることがすべて』という状態だった」と説明。「知識を得ることで安心も得られた反面、検査結果が出る前に次第に卵巣がんの症状がすべて自分に当てはまることも分かり、不安も増大していった」と当時を振り返った。

境界悪性卵巣腫瘍のIIIb期と判明後、ネット上で同疾患に関する基礎的な医学情報は見つかったものの、自身の病期に対する治療に関する情報は見つけにくく、専門医向けのガイドラインなどを入手して情報を得てきたと麻美さん。そうした経験を基に「同じ疾患の患者さんのブログなどは参考になったが、実際に治療経験がある医療機関側が具体的な症例や治療法などを説明するページなどを設置していてくれれば、より参考になったと思う」との見解を示した。

信憑性がないサイトが表示されにくいアルコリズム、すり抜けたWELQ

一方、(Search Engine Optimizer)専門家の辻正浩氏は、09年当時は「がん」の用語でネット上を検索すると、出所不明な個人サイトが上位に来るなどの状況があったものの、「現在では深刻な医療・健康関連情報の検索では信頼性がないサイトを検索表示されづらくするアルゴリズムが検索エンジン側で働くようになった」と説明。ただ、このようなアルゴリズムを働かせても、その時々の状況に応じて検索者が求める情報が異なるため、医療関連のキーワード検索で不適切なサイトを完全に表示させないような仕組みを構築することは困難だと指摘した。


SEO専門家の辻正浩氏

そのうえで辻氏は、直近のGoogleにおける「肺炎」のキーワード検索結果を提示。16年5月末時点ではトップからWikipedia、製薬会社HP、医療機関HP、製薬会社HPという表示順だったが、8月末時点でWELQの記事が5位に登場し、9月末以降はトップと2位にともにWELQの記事が表示されるようになったと時系列で解説した。

また、辻氏が2016年11月時点で健康に関する悩み488ワードを検索エンジンに入力し、トップ5以内に入ったページの個数をカウントしたところ、トップはWELQの236個、2位が「いしゃまち」(運営:株式会社メディウィル)の106個、3位が「スキンケア大学」(運営:株式会社リッチメディア)など。これらワードでのページ表示状況の経時的変化では、2015年10月に開設されたWELQは、2016年初の時点で「ac.jp」「go.jp」などのドメインを有する公的なサイトよりも低位だったが、16年3月以降は急激にトップ5内での表示が上昇。いわば「WELQにより検索エンジンが攻略された」(辻氏)形となり、初夏にはついに国内トップに躍り出るようになった。

「WELQが閉鎖して一番おいしい思いをしているのはNAVERまとめ」

辻氏はさらに、WELQの全記事非公開後の同表示件数の状況についても言及。「ac.jp」「go.jp」系サイトのトップ5以内の表示件数は伸長しておらず、代わって「WELQが閉鎖して一番おいしい思いをしているのはキュレーションサイトの『NAVERまとめ』(運営:LINE株式会社)」と述べ、信頼性が低いサイトが上位に表示されるという問題はほとんど解決していないとの見解を強調した。

そのうえで、解決策として(1)検索エンジン側のアルゴリズム進化、(2)情報を求める側への啓蒙、(3)情報発信者側の信頼性向上努力、を指摘。既に2年前からGoogleの米国サイトでは、多数の疾患で医師とGoogleが提携して作成したコンテンツがトップに表示されるようになっていると語ったが、「いずれ日本でも導入される見込みだが、米国から2年を経過した段階でも実現しておらず、導入を待つには時間がかかりすぎる」との認識を示し、むしろ利用者や発信者側の意識改革が重要と述べた。利用者側の望ましい対応としては、「症状などで検索するのではなく、予め信頼性の高いサイトを見つけて、そこで直接情報を取得するようにすることが重要」と強調した。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大