先天性の大動脈弁二尖弁、全人口の約0.5~2.0%に合併
国立循環器病研究センターは8月18日、二尖弁大動脈弁狭窄症の進展に、線維化が関与している可能性を初めて報告した。この研究は、国循心不全科の濱谷康弘医師、安斉俊久部長、臨床病理科の植田初江部長らの合同研究チームによるもの。研究成果は、科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
画像はリリースより
大動脈弁には通常開閉する部分(弁尖)が3つあるが、そのうち2つが分離発育せず、結果として開閉部分(弁尖)が2つになっている状態を大動脈弁二尖弁という。先天性の大動脈弁二尖弁は、全人口の約0.5~2.0%に合併する先天的な異常といわれており、大動脈弁狭窄症を来す主要な原因のひとつとされている。
二尖弁大動脈弁狭窄症は、三尖弁大動脈弁狭窄症と比較して、年齢がより若いうちから弁の狭窄が進行するといわれており、若年者の中では大動脈弁狭窄症の最も多い原因となっている。しかし、大動脈弁二尖弁における、大動脈弁狭窄症進展のメカニズムは不明な点が多いのが現状だった。
三尖弁大動脈弁狭窄症や二尖弁大動脈弁逆流症と比べ、線維化が有意に多く
今回の研究では、国循で大動脈弁二尖弁による重症大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を行った24例の大動脈弁検体と、三尖弁による大動脈弁狭窄症で大動脈弁置換術を行った24例、二尖弁による大動脈弁逆流症で大動脈弁置換術を行った24例の大動脈弁検体の病理標本を用いて、3群間での病理組織像の比較検討を行った。
病理学的検討の結果、二尖弁大動脈弁逆流症と比較して、炎症や血管新生、石灰化の程度は二尖弁大動脈弁狭窄症で多く、二尖弁大動脈弁狭窄症と三尖弁大動脈弁狭窄症においては同程度だった。一方、線維化の程度は三尖弁大動脈弁狭窄症や二尖弁大動脈弁逆流症の患者と比較し、二尖弁大動脈狭窄症の患者で有意に多いことがわかった。
これらにより、二尖弁患者では、弁の線維化が狭窄に関与していることが示唆され、二尖弁大動脈弁狭窄症のメカニズムの解明、治療法の開発につながるものと期待されるとしている。今後は、多数の症例において、より詳細にメカニズムに迫る研究を行うことが課題と、研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース