日本で頻発する研究不正に対し、研究者が自主的・自律的に対応していく全国的な拠点を目指した財団法人として、4月に発足した公正研究推進協会(APRIN)は20日、都内で記者会見し、研究倫理に関する教育や啓発を進めると共に、大学や研究機関における研究不正への対応を均てん化することにより、論文やデータの改ざんなど研究者の不正を防ぎ、日本の科学に対する信頼回復を図る方針を示した。会長に就任した吉川弘之元日本学術会議会長は「研究不正かなと思ったら、行政機関よりもAPRINに相談してほしい」と訴えた。
APRINは、STAP細胞をめぐる問題や、ノバルティスファーマのディオバン事件などの論文改ざんをはじめ、国内で研究不正が相次いだことに対し、研究者集団であるアカデミア側に明らかな行動不足があったとして、プロフェッショナル集団として自ら公正な研究への取り組みを行うことを目的に設立された。医学、生命科学にとどまらず、人文・社会科学など幅広い学問領域にわたって研究倫理の問題を検討する。運営は会費や寄付でまかない、役員などの執行陣は無報酬となる。
具体的な活動としては、信州大学や東京医科歯科大学など6大学が運営している研究者倫理を教育するインターネット事業「CITIジャパンプロジェクト」を継承し、研究者への基本的な行動規範を教育するほか、各機関における研究不正への対応を均てん化するため、ガイドラインや規範作成に助言して、研究者の不公平感の払拭に努める。
また、大学や研究機関、学術団体等から研究不正の相談があった場合は、助言や支援を行うほか、不正にどう対応し、結論を出したかを記載した事例集を作り、大学などによって処分の程度に差が出ないようにする。
吉川氏は、「研究不正かなと思ったら、行政機関よりもAPRINに相談してほしい」と述べた。