立体構造解明で、NLRの役割の理解深まると期待
東京大学は6月10日、病原体の感染を察知する細胞内センサータンパク質の一種であるヌクレオチド結合性多量体ドメイン(NOD)の立体構造を世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院薬学系研究科の清水敏之教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」オンライン版に6月10日付けで掲載されている。
画像はリリースより
ヒトの身体には、細菌やウイルスなどの病原体の感染を防ぐ仕組みが備わっており、病原体の感染を察知する細胞内センサータンパク質が存在し、このような細胞内センサータンパク質のひとつにNOD様受容体(NLR)と呼ばれるタンパク質群がある。
このタンパク質群は、病原体の痕跡や異物を認識(リガンド認識)することに伴い複数結合した構造(多量体)を形成することで活性化し、細胞内に病原体感染の情報を伝達することが知られているが、その立体構造については明らかになっていないものがあり、立体構造が明らかになることで、NLRの役割の理解が深まると考えられていた。
病原体を感知する仕組み解明の重要な構造基盤に
研究グループは今回、NLRのひとつとして知られているNOD2が細胞のエネルギー源であるADPと結合し、活性が失われた状態における立体構造をX線結晶構造解析を用いて明らかにした。その結果、ADPはNOD2内の異なる機能をもつ領域(ドメイン)間の相互作用を媒介するように結合していること、またLRRと呼ばれるドメインにはリガンド認識に関わると推測される穴のような構造(ポケット)が見つかったとしている。
NOD2にはDNAの塩基配列がひとつだけ異なる一塩基多型(SNPs)が多く報告されており、NOD2の一塩基多型は、ブラウ症候群やクローン病といった自己炎症性疾患に関連していることが知られている。今回の成果は、NOD様受容体が活性化される機構の解明や、病原体を感知する仕組みを解明していく上で重要な構造基盤となると期待される。研究グループは、さらに研究を続け、活性化状態のNOD2の構造を解明したいと述べている。
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