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がんの悪性度をMRIで高感度に可視化できるナノマシン造影剤を開発-東工大

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2016年05月19日 PM12:30

MRI造影効果を有するマンガン造影剤を搭載したナノマシン造影剤

東京工業大学は5月17日、治療抵抗性を持つ悪性度の高いがん細胞が存在する「腫瘍内低酸素領域」を、高感度でMRIによって可視化できるナノマシン造影剤を開発したと発表した。この研究は、同大科学技術創成研究院の西山伸宏教授、ナノ医療イノベーションセンターの片岡一則センター長、米鵬主任研究員、量子科学技術研究開発機構の青木伊知男チームリーダーらによるもの。研究成果は「Nature Nanotechnology」オンライン版に5月16日付けで掲載されている。


画像はリリースより

がんのMRI診断においては、高感度化、がん組織の検出力(特異性)の向上、診断情報の高度化(微小環境の変化など)が望まれている。そのためのMRIに関する技術開発が世界中で行われているが、より安全で高機能な造影剤の開発も、近年強く求められている。

研究グループは、生体に対して安全で、がん組織での低pH環境に応答して溶解する「リン酸カルシウムナノ粒子」に、MRI造影効果を有するマンガン造影剤を搭載したナノマシン造影剤を開発。このナノマシン造影剤は、造影剤を内包した内核が、生体適合性に優れた高分子材料の外殻で覆われており、血流中の環境(pH7.4)では安定し、腫瘍内の低pH(6.5-6.7)においてpHに応じてマンガン造影剤をリリースするという特徴を持つという。

治療前の効果予測や治療後の迅速効果判定への応用にも期待

このナノマシン造影剤をがん細胞の皮下移植モデルマウスに投与し、MRI計測を行ったところ、投与30分で腫瘍全体が造影され、時間の経過とともに腫瘍中心部の信号強度が増大。この腫瘍中心部で信号が顕著に増大する部分は、組織切片の免疫染色の結果から、がんの「」(Hypoxia)と一致し、加えて、がんの内部で乳酸が溜まる部位とも一致していたという。

この結果からナノマシン造影剤は、腫瘍内の僅かなpH変化を可視化し、「低酸素領域を高感度かつ高精度でイメージングできる」ことが明らかになったとしている。また、このナノマシン造影剤をわずか1.5mmの小さな大腸がんの肝転移モデルにおいてMRIで計測したところ、既存の肝がん用MRI造影剤であるプリモビストよりも優れた検出力を示すことも明らかになったという。低酸素領域は、抗がん剤治療や放射線治療に対して抵抗性を示すことが知られており、がんの内部に低酸素領域を持つかどうかを調べることは、治療方針の決定や治療効果の検証に重要である。

今回開発されたナノマシン造影剤により、悪性度の高いがん細胞が潜む低酸素領域を、放射線被ばくでなく高い解像度で三次元的に解析する手段が得られた。臨床で広く利用されている生体検査と比べて低侵襲的で、体内のあらゆる臓器・組織に適用できる「イメージングによる病理診断技術」としての実用化が期待される。また、治療において、治療前の効果の予測や治療後の迅速効果判定にも応用でき、将来的に見落としの無い確実性の高いがん診断と治療が可能になる、と研究グループは述べている。

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