遺伝子の発現が抑えられるヘテロクロマチン構造を解析
横浜市立大学は3月3日、遺伝子の発現が抑えられるヘテロクロマチン構造形成に関与するタンパク質の結合機構を解明したと発表した。この研究は、同大大学院生命医科学研究科の下條秀朗元特任助教、木寺詔紀教授、佐藤衛教授、西村善文学長補佐と、名古屋市立大学の中山潤一教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
DNAは細胞の核中で折り畳まれ、クロマチン構造となっている。このクロマチン構造には、DNAが剥き出しにあって遺伝子が活発に発現しているユークロマチンと、DNAがきつく折り畳まれたヘテロクロマチンという2種類が存在する。ヒトにはさまざまな機能を持った細胞があるが、細胞毎に特定の遺伝子が発現し、クロマチン構造が異なっていると言われている。ヘテロクロマチンでは、ヘテロクロマチンタンパク質(HP1)によって数珠状構造が凝縮し、遺伝子の発現が抑えられるとされていた。
タンパク質は球状構造を取らない紐様構造でも機能
今回、研究グループは、このタンパク質の紐様構造を、横浜市大鶴見キャンパスに設置したNMR分光器、スーパーコンピュータ、実験室内小型X線小角散乱装置を用いて解析。その結果、タンパク質から伸びた紐様構造のタンパク質同士が互いに結合して、そのタンパク質の結合を強くしていることを世界で初めて明らかにしたという。
特にクロマチン構造に関連するタンパク質においては、紐様構造のタンパク質同士の相互作用が重要であることが分かり、タンパク質は球状構造を取らない紐様構造でも機能することがわかった。
今回の成果は、教科書等で確立されている「タンパク質が機能するときは球状構造を取り紐状構造では機能しない」というパラダイムを大きく変化させる可能性があるという。また、がん細胞やiPS細胞等ではヘテロクロマチン構造が異なっていることが示唆されているため、がんの発生の理解やiPS細胞産生の理解につながるとして期待が寄せられている。
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・横浜市立大学 プレスリリース