神経難病である多発性硬化症の二次進行型MSに重要な役割
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所は10月5日、神経難病である多発性硬化症(MS:Multiple sclerosis)のなかでも、特に高度の神経障害をのこす二次進行型MSで、エオメス(Eomes)というタンパクを発現する新型リンパ球が重要な役割を果たすことを明らかにした。
画像はリリースより
この研究は、NCNP免疫研究部山村隆部長、大木伸司室長、ベンレイバニー研究員らの研究グループによるもの。同研究成果は、「Nature Communications」オンライン版に同日付で掲載されている。
MSは、脳や脊髄に炎症が起こり、視力障害や手足の麻痺、感覚障害、高次機能障害等の症状が現れる難病。症状の増悪と軽快を繰り返す再発寛解型MSでは、寛解期には普通の人と同じような生活が可能だが、発病から数年~20年後から症状が徐々に悪化する二次進行型MSでは、免疫に作用する薬剤の効果は期待できないという意見もあり、その発症機序には未解明な部分が多かった。
ごく少数の細胞でも病態形成に関わる可能性
今回発見された転写因子エオメスを発現するリンパ球(Eomes陽性ヘルパーT細胞)は、神経細胞を障害する物質を分泌して脳や脊髄の慢性炎症を引き起こす。研究グループは、マウスモデルでこのリンパ球が病気の発症に関わることを証明し、治療薬開発の新たな標的になることを示した。また二次進行型MS患者の血液や髄液でも、この新型リンパ球が増加していることが示唆されたという。
また、今回同定したこの新型リンパ球は強い病原性を示すため、ごく少数の細胞でも病態形成に関わる可能性が十分に考えられる。したがって、Eomes陽性ヘルパーT細胞を標的とすることで、さまざまな神経変性疾患が治療できる可能性があるとして、今後の研究に期待が寄せられている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース