東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授は28日、都内で開かれた日本OTC医薬品協会のセミナーで、要指導・一般用医薬品を年間1万円以上購入する世帯の税負担を軽くする所得控除制度を導入した場合、かぜや鼻炎など4種類の症状だけで1151億円の医療費を削減できるとの試算を示した。この制度に約750億円の財源を確保する必要があるものの、病院の受診からOTC薬に切り替わることにより、差し引きで推計約400億円の削減効果が期待できるとした。
厚生労働省の2016年度の税制改正要望では、セルフメディケーション推進のため、要指導・一般薬の年間1万円以上購入した世帯に対する所得控除制度の創出が盛り込まれ、現在、10万円を上限に、OTC薬の年間購入費用から1万円を差し引いた金額を課税所得から差し引く案が検討されている。
川渕氏は、15~69歳の男女5万人の消費者を対象とした調査をもとに、1万円以上のOTC薬の購入で医療費控除の手続きを行う世帯数を試算したところ、全世帯の32.8%で1852万世帯に上ることを明らかにした。
その上で、かぜ、アレルギー性鼻炎、腰痛、胃腸症状の4種類の症状に限定し、病院の受診からOTC薬に切り替える消費者の割合を推計すると、かぜで22.6%、鼻炎で14%、腰痛で18%、胃痛で8.8%になると分析した。
日本の医療費全体で見ると、かぜで508億円、鼻炎で291億円、腰痛で183億円、胃腸症状で168億円となり、4症状だけで推計1151億円の医療費が削減できると説明。同制度の控除対象の下限額を1万円とした場合、約750億円の財源確保を必要とするものの、全体として約400億円の削減効果があるとし、「節税メリットを生かしたセルフメディケーションが推進できる」と指摘した。